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薬学者が見た健康食品、ニセ薬はなぜ無くならないのか?(3)

2010年5月 3日 08:00

長崎大学副学長・薬学部教授 中島憲一郎氏 中島憲一郎教授は、覚せい剤関連化合物の研究に長年従事してきたこの分野の第一人者。2002年に死亡者まで出した、「中国製ダイエット食品」(無承認無許可医薬品)の成分分析も行っている。研究室では、「覚せい剤など乱用薬物の分析」「医薬品の適正使用に関する研究」「脳内神経伝達物質の分析研究」のほかに、「機能性食品の品質評価」も大きなテーマに掲げている。健康食品にも大きな関心を寄せており、これまでにも赤野菜やノニ、冬虫夏草などで分析研究を行なってきた。同氏に健康食品に関心を持ったきっかけや、健康食品の孕む課題、展望について聞いた。


健康食品は健康な「食品」


 ――それは癌に対してでしょうか。


中島 私は特定の疾病名を出したくはないのですね。それは体のホメオパシーを維持するのにいいだろうなとはいえます。たいてい民間伝承薬とか、ずっと伝わって使われているものというのは何らかの効果があるから使われてきているのだと思うのですよ。ただ、その中の成分だけを取り出して使っていくばあいに、これはもう医薬品の世界に入っていきますよね。でも、複合的に食品として使われている間は、助けるものと邪魔するものとうまくバランスがとれているのだと思うのです。
 それを一方だけ取り出してくると、これは毒にもなるし医薬品にもなると思うものですから、それを話すときと、全体を話すときには分けて話すべきではないかと思います。たとえば冬虫夏草のなかの「コルディセピン」という成分は、がんを抑える力を持っているのです。かといってそれを飲んでがんを防げるかというと、そういう話ではまたないのです。
 ブアメラにもβ-カロテン系の色素がたくさん入っています。ということは、私たちの世界でいうと、抗酸化作能があるということですから、大きな大きな意味で細胞とかを障害するものを除くわけすよね、除くということは体がそれだけ障害から守られるということですから、ずうっと何段階も経ていくと、たとえばがんになりそうなものを助けるかもしれない。しかしそれがすごく強すぎて、今度はラジカル(活性酸素)を発生させるようなものに変わっていけば、これは却って癌を発生させるものになるかもしれない。ですから、それはもう、その人に体のなかの働きがどうかということであって、同じ成分でも特定の個人に対してどう働きかけるかはわからないわけです。
 ですから健康食品というのは、自分の体の免疫力を高めるとか、健康に保つという言い方がいいのかどうかは別として、健康な体を支えるために摂っているのであって、本来、治そうとか、そういう目的であってはならないと思うのです。だから食品でいいと思うのです。いわば健康な食品なのです。
 こういう成分は有効なのですか、と問われたときに、その成分が入っているのは間違いない。それを取り出して医薬品として使われる例もいくらでもある。じゃ、それを飲んだからといって健康が保たれるのかというと、それはまた別の話だろうと――。
 こういうものには脂肪分もあるしたんぱく分もあるし、ミネラル分もあるから、そういうものが複合的に作用しているのだろうと思うのですね。本来、それらを取りやすいように作っているのが健康食品だろうと思うのです。ローヤルゼリーだけだと、とてもじゃないけど食べられないけれども、ローヤルゼリーにほかのものをミックスさせて、カプセルにしたとすれば飲みやすくなるからそれを摂っている。パッケージにしてやると摂れる。それが食品産業の加工だと思っているわけですよ。何でもそうだと思うのですよ。

(つづく)

【聞き手 田代 宏】

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