1.ビタミンK1
ビタミンKには緑葉野菜に含まれるK1(フィトナジオン)と微生物によって合成されるK2(メナキオン)の2種類がある。K2は、われわれ日本人が日常的に食べている納豆に多く含まれており腸内細菌で合成される。ビタミンKの大きな働きは出血時に血を固めたり、骨の形成に関与する。A,D,Eと並んで脂溶性のビタミンである。
デンマークのダムは、1929~30年にかけてニワトリのコレステロール代謝を研究している。無脂肪飼料で飼育したニワトリの成長が止まり、消化管や皮下、筋肉内で出血することを観察した。「出血を防止する」、すなわち「凝固(ドイツ語でKoagulation)」の頭文字をとって、この成分をビタミンKと名付けた。1936年にアメリカのドイジがK1,K2の精製、構造決定をして、K3(メナジオン)の合成に成功している。現在、世界的にビタミンKは13種類のビタミンのひとつとして欧米では食品の扱いであるが、日本では栄養機能食品としても食品としても認められていない。
2.ビタミンB12(コバラミン)
B12は、悪性貧血の研究から発見された水溶性のビタミンで「赤いビタミン」と呼ばれる。アメリカのキャッスルが1929年に初めてその存在を報告し、アメリカのメルク社のフォーカスとイギリスのグラクソ社のスミスのグループによって1948年に肝臓から結晶として取り出すことに成功した。B12は13種類のビタミンの中で分子量が最も大きく、構造もきわめて複雑で、1955年にX線結晶解析法を用いて化学構造が明らかにされた。この困難な仕事は、イギリスのホジキンを中心として行なわれた。B12は悪性貧血を予防するのみでなく、神経の機能維持にも有効に働く。すなわち、神経細胞内の核酸やタンパク質などを合成したり、修復したりする働きがある。神経の働きには、B1やB6なども同時に摂取することが勧められる。B12は現在、ビタミンとして世界的に認知されている13種類の最後に発見・構造決定・合成されたビタミンである。
(つづく)
<プロフィール>
伊藤 仁(いとう ひとし)
1966年に早稲田大学を卒業後、ビタミンのパイオニアで世界最大のビタミンメーカーRoche(ロシュ)社(本社:スイス)日本法人、日本ロシュ(株)に就職。「ビタミン広報センター」の創設・運営に関わる。01年から06年まで(財)日本健康・栄養食品協会に在籍。その間、健康食品部でJHFAマークの規格基準の設定業務に携わる。栄養食品部長を最後に退任。