今年の参加者を見ると、前回で紹介した以外には、セッションの発表者として主に次のメンバーがセッションに参加していた。
【自民党】平将明、世耕弘成、柴山昌彦、安倍晋三元首相
【みんなの党】中西健治、浅尾慶一郎、松田公太、渡辺喜美代表
【評論家・文化人のゲスト】櫻井よしこ、渡部恒雄(渡部恒三・民主党衆議院議員の息子)、ロバート・フェルドマン(モルガン・スタンレーエコノミスト)、郷原信郎(名城大学コンプライアンス研究センターセンター長・教授)、辰巳琢郎(G1理事・俳優・ワイン専門家)、松岡正剛(評論家)
興味深いのは先日、都知事選に出馬表明した、ワタミの渡邊美樹前社長も今回のG1に出席したという点だ。その渡邊氏を都知事選でみんなの党の渡辺喜美代表が支援するという報道の後だけにこれは実に興味深い。
そして、これとは別に一般参加者がいる。これを見れば分かるように参加者には小沢一郎元代表や自民党旧橋本派系の議員たちが一人も居ないのである。これは「グローバリズム志向」の同サミットの「限界」を示しているといっていい。共通の思想信条で集まったエリートたちが山奥で議論を行なうというダヴォス会議の悪い部分をそのまま受け継いでいる。
エリートたちがひっそりと山中の高級リゾートに集まり、ワインを傾けながら次の世界秩序を語る、という皮肉化・戯画化されたダヴォスイメージをそのまま実現したのがこの日本のG1サミットであるわけだ。
穿った見方をすれば、このサミットはやがてダヴォス会議本体に出席するための日本の財界人や政治家たちをふるいにかけるための「予選」であるようにも見える。
さらに言えば、この種の会合は、限られた思想信条を持ったエリートたちの前に「次のリーダー」をお披露目する性格も持っているのだろう。欧米ではダヴォス会議よりも秘密性の高いビルダーバーグ会議というものが1954年以来開催されており、この会議には過去、ビル・クリントンやジョン・ケリー上院議員といった政治家が参加し、その後、大統領選挙に打って出ている。ドイツのアンゲラ・メルケル首相もこのパターンで国際社会にデビューした。G1サミットが今後、そういう性格を持っていくのかは今の段階では未知数だが、この種の会合がエリート層の「社交」(人脈作り)を兼ねている以上、その可能性は否定出来ない。
一見するとどうしても「前原誠司を総理にする財界人の会合」とも見えてしまう「G1サミット」。かつて前原大臣を支援していた、京都財界の長老で京セラ名誉会長の稲盛和夫氏は、現在は鳩山・小沢グループと連絡を密にする一方で、菅民主党政権に失望したと痛烈に批判している。その前原大臣は若手エリートの会合の理事会メンバーを務める。日本の財界人も世代交代が進みつつあるということかもしれないが、歴史的に「治外法権の地」(アジール)と言われた小淵沢。そのリゾート地に集まる若手政治家たちに「国民の声」は果たして本当に届いているのだろうか。
参照:堀義人氏のブログ:http://blog.globis.co.jp/hori/2011/02/g120111-8765.html
には主催者側の視点で今回のG1サミットについて述べられており興味深い。
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<プロフィール>
中田 安彦 (なかた やすひこ)
1976年、新潟県出身。早稲田大学社会科学部卒業後、大手新聞社で記者として勤務。現在は、副島国家戦略研究所(SNSI)で研究員として活動。主な研究テーマは、欧米企業・金融史、主な著書に「ジャパン・ハンドラーズ」「世界を動かす人脈」「プロパガンダ教本:こんなにチョろい大衆の騙し方」などがある。
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