<企業経営とリーダーの本質とは何か?>
わが国を代表する建設会社「山水建設」の新社長就任を巡る欲に塗れた様々な策略、人間模様を赤裸々に描いた経済小説「飽くなき権力への執着」の著者・野口孫子氏。一方、福岡の新興デベロッパー「DKホールディングス」の破綻の一部始終を題材とした経済小説「天国と地獄の狭間~新興デベロッパーの倒産から再出発までの600日の記録」で、世の経営者や管理者への教訓を与えた石川健一氏。企業経営の天と地を知る両氏が、NET-IBにおける連載を終了し、その執筆時の想いや企業経営とリーダーの本質について熱く語った。
【第1回 1兆円巨大企業と新興上場企業】
―― 山水建設が1兆円の巨大上場企業、一方、DKホールディングスは新興上場企業で260億円の規模。それぞれの経営者の考え方には違いがあります。
野口 ただし、山水建設のルーツは、親会社のお荷物となっていた新規事業の小さな会社です。松下幸之助翁が創業し、世界的企業となったパナソニックなど、最大手企業のほとんどは、個人創業の零細レベルからのスタートでした。町工場の規模が、どのように発展を遂げるかは、その企業の経営者の未来志向にほかなりません。
石川 それぞれ発展段階があると思います。企業組織の規模において、当初は経営者が旗を振ってという少人数段階。少し拡大して20~30人になると間に入り、まとめてマネジメントする人間が必要になります。それが100人になると、さらに細かくマネジメントする人物が必要になるというように、企業が発展するには何重ものハードルをクリアしていかねばなりません。
野口 私も同感です。いきなり企業が大きくなるということはないのです。"経営者の哲学がはっきりしていること"は、企業の発展において不可欠な資質ですね。
石川 そうですね。規模が小さければ経営のベクトルを合わす人々が自然にできる人、少し規模が大きくなるとそのベクトルを噛み砕いてマネジメントできる人々が必要です。残念ながら、私が所属したDKホールディングスは第2、第3の関門で、志半ばに民事再生法を申請・適用され破綻してしまいましたが―。
野口 ちょうど不動産、ファンドバブルの時(DKホールディングスの破綻は2008年11月)でしたね。
石川 ファンドバブルが弾けてDKホールディングスは破綻した─これは紛れも無い事実ですが、ファンドバブルという原因は表面上のものであります。その一方で、私自身の領域で振り返ると、最終的には組織内の人の問題であったことに帰結します。
【文:河原 清明】
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