【第3回 組織とリーダーの胆力】
―― 現在の山水建設は、現会長は3代目。現社長は4代目。半世紀前、小企業レベルであった山水建設創業者山田氏は、切磋琢磨して今日の地位の礎を築きました。そこには、理念と哲学があったのでしょう。社員らは創業者を意気に感じて共に働いた。腐敗堕落した組織に変質していったのは何時ごろからですか。
野口 現会長の坂本氏が社長に就任してからでしょう。残念ながら、現会長には創業者の会社経営に対する高い志と倫理観など、微塵も無い「自分さえ良ければ良い」という会社経営を行なって、今に続いてしまっている。
―― 1兆円企業であろうが、250~260億円の企業に関わらず経営トップの姿勢によって、会社組織は腐敗してしまうのですね。
石川 お話を伺っていると、山水建設の現会長の人格そして人望はほとんどないことが組織瓦解の原因ですね。
野口 その通りです。絶対的権力によって組織は固められますが、人心が離れてしまえば、全社一丸という社内のムードにはなりにくいのです。ファンドバブルに乗り、業績を繕うために、不動産ファンドに嵌っていくのです。不動産バブルの崩壊によって、一気に多くの評価損の土地を所有することになり、山水建設内部の人間が多数、犠牲になったことも確かです。
―― 250億円規模の企業であるなら実力が有る者順に、会社を承継していくことが当然です。かたや1兆円規模になると、経営能力やリーダーシップという実力よりも、社内での策略・画策が上手く出来る人物が組織のトップに就きます。組織が一人歩き出来るからです。
石川 それだけ、人が居るということですね。DKホールディングスの規模でしたら、限られておりました。
野口 要は、経営能力など無くても良い。創業者の作り上げた良き社風の遺産を食いつなぎながら企業内を纏める人物なら誰でも経営トップになれたのです。山水建設は。
―― 人材が多数居るなか、適材適所という専門職の観点から見ると、山水建設のなかで経営者になれる人物はそういないのではないでしょうか。
野口 残念ながらおっしゃる通り、本当の経営者になれる人材は皆無でしたね。
石川 キャリア官僚や財閥系や老舗の大手企業のトップは、若かりし頃から"オーラ"が出ていたと感じます。山水建設もそうでしたか。
野口 山水は、野武士的な企業でしたからそういう雰囲気ではなかったですね。
石川 社員は、金銭的な動機(給与或いは賞与)の下で営業活動を実践して、結果業績をあげていくというスタイルですね。
野口 以前は"業績"という面での評価のウエイトは低かったのですが、最近それは高いですね。
【文:河原 清明】
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