2024年05月11日( 土 )

別次元への挑戦 求めるのはオールマネジャーの道

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照栄建設(株)

激変、目覚ましい経営質の転換期

照栄建設(株)    2022年6月に50周年を迎えた照栄建設(株)は、福岡地区トップクラスのゼネコン企業として周知されている。「アルテマインド」「ヒューマインド」「ネオヒューマインド」などの自社ブランドマンション開発から戸建住宅や商業施設、公営住宅などの多岐にわたる物件を手がけてきた。

 【表】既往の業績を参照されたし。データ・マックスの規定では、3期連続で経常利益3億円を堅持した企業を中堅企業扱いにしている。同社に関しては経常利益10億円以上を維持し、利益率8%以上を叩き出している。ゼネコン業界の収益改善が進んだのが13年からであるが、当時は粗利率10%を確保するかどうかが企業存続の攻防戦であったから隔世の感がする。

 もちろん、全国的にもゼネコンの経営環境は大幅に好転した。だが、福岡地区ではとくに激変が進んだ。都市福岡の国際化が急速に進んだことにより、人口増と建設投資が急増した。天神再開発をはじめとする再開発プロジェクトが各所で展開され、公共事業の予算もそれを後押しした。おそらく後世からは「現在の福岡の都市改造は豊臣秀吉の『太閤町割』に匹敵する歴史的なものであった」と評価されるであろう。福岡における建設業界の地位が同社を筆頭に大幅に上がったと評価されることは間違いない。

淘汰される時代がやってくる

照栄建設(株) 冨永一幹 社長
照栄建設(株)
冨永 一幹 社長

    現社長・冨永一幹氏は17年8月に3代目社長に就任した。一言でいえば非常に戦略眼に長けた冷静沈着な人物である。福岡にはこういうタイプの経営者は稀有であろう。冨永社長は、「たしかに必死で企業努力は行ってきた。ただ自力でこんなに業績をアップできたのではない。都市福岡の大躍進があってからこそ、当社も同じクラスの同業者たちとともにその恩恵を受けることができたのである」と中核企業へ登り詰めた要因を謙虚に分析する。なかなかクールにみている。

 同社の実績を振り返ってみよう。東区再開発においては、同社が采配して完成した地域ゾーンもある。さらに西に目を転じると学園都市があり、そこでも幾多の物件を請け負った。その蓄積の上に地域ゾーンを管理して『学生と地域住民が共存する』プロジェクトを企画している。このように、今までのような単なる請負物件を建てるだけではなく、高い次元での対応力が求められるようになったのである。

    だからこそ建設企業では経営の質を変革できなければ淘汰される流れとなる。未来に挑戦する姿勢が皆無の企業には人材は寄ってこない。難しい講釈は省略しよう。今後、同業界の若手人材の確保は難儀になる。いや1人も寄ってこない。工事現場でロボットが主力になることが実現することもあり得ない。人々を結集できずに廃業する同業者が増加していくであろう。資金繰りよりも人繰りのほうが困難になる時代の到来である。

 ひと昔前であれば廃業といえば悲惨な光景しか浮かばなかった。だが、今は規模に違いがあっても身分に応じた資産の形成はできる。資産を処分しても孫の代まで飯が食える蓄積を残すことができるのだ。また、会社売却という選択肢もある。だからこそ、かつての悲惨なイメージからは脱却できる。それがせめてもの救いだ。「業者の数が減っていくのは時代の流れである。ただ生き残る、勝ち残るには他業者をしのぐ理念と戦略が必要となってくる」と冨永社長は力説する。

人材をオールマネジャーの領域に到達させる

 これから先の10年間、同業者や下請業者の淘汰のなかで勝ち残れる道は、社員たちの底上げと意識改革である。現在、同社の従業員は110名で完工高140億円として1人あたり1.3億円である。ひと昔前は1人あたり1億円であった。この1人あたりの生産性アップは企業努力の成果ではない。工事単価が高騰したおかげなのである。冨永社長曰く、「採用のレベルを下げれば現陣容の頭数をそろえることは可能かもしれない。しかしそれでは会社全体のレベルアップは難しいであろう。発想を変えて、すべての社員たちの底上げに全力投入したい」。

 その要諦は、アプリなどのツールの活用である。「ツールを有効活用すればセクションが違っても生産性向上、効率化は必ず進む」と断言する。たとえば経理システムを上手に活用することで、経理・総務関係の要員は半減する。残った人員が残業に追われるという事態もなく、定時には退社できる。また、余裕が生まれることで、ほかのセクションを思いやる余裕が出てくる。内勤業務に関しては、「オールマネジャー」へ変貌していくのである。そうなれば、社員それぞれのスキルアップが図れる可能性が高まってくる。

照栄建設(株)    冨永社長は「技術者にはプロのエンジニアへステップアップしていただきたい」という期待感を語る。「私の領域は住宅です」と自己規定させてしまうのでなく、特殊物件にも精通させる場をつくることも重要になってくる。たとえば、九州大学キャンパスに連動する不動産(たとえば今宿)を購入して、「シティショウエイ」を誕生させる。この実現にあたって、技術者たちはかなりの苦労や困難に立ち向かわなければならないだろう。冨永社長の最終ゴールはセールス専従者をゼロにすることである。

 この変革プログラムの最終ゴールの目標は「80人規模で現在の完工高を完遂させること」である。目標達成後には、社員の皆さま方には「平均年収600万円がという褒美が待ち構えている」と筆者は読む。


<COMPANY INFORMATION> 
代 表:冨永 一幹
所在地:福岡市南区向新町2-5-16
設 立:1972年6月
資本金:7,000万円
TEL:092-566-1249
URL:https://shoei-k.com


<プロフィール> 
冨永 一幹
(とみなが・かずもと)
1969年生まれ、福岡県春日市出身。福岡大学大学院人文科学研究科教育臨床心理学専攻修士課程修了。2005年4月に照栄建設(株)入社。07年7月取締役社長室長、16年4月総務部長を経て17年8月1日に代表取締役社長に就任。

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