2024年05月17日( 金 )

博多の龍神神社(2)櫛田神社

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櫛田神社拝殿
櫛田神社拝殿

櫛田神社は龍神神社?

 山笠でおなじみの「お櫛田さん」──博多総鎮守「櫛田神社」は龍神神社の1社である。祭神は大幡主大神(おおはたぬしのおおかみ/別名:櫛田大神)、天照皇大神(てんしょうこうだいじん)、素盞嗚大神(すさのおおおかみ/別名:祇園大神)の三神で、正殿に大幡主大神、左殿に天照皇大神、右殿に素盞嗚大神が祀られている。

 日本全国に櫛田神社は複数あるが、その多くが櫛名田姫(くしなだひめのみこと)を主祭神とする神社であるのに対し、福岡市内に3社ある櫛田神社では、櫛名田姫は祀られていない。一応、祭神について補足すると「古事記」においては、伊邪那岐命(いざなぎのみこと)が伊邪那美命(いざなみのみこと)のいる黄泉の国から生還後、黄泉の穢れを洗い流した際、左目を洗ったときに天照大神が、右目を洗ったときに月読命(つくよみのみこと)が、鼻を洗ったときに建速須佐之男命(たけはやすさのおのみこと)がそれぞれ生まれたとされており、これら三神は三貴子(みはしらのうずのみこ)と呼ばれている。水にまつわる神さまを祀っている神社が龍神神社とされており、櫛田神社は天照大神、建速須佐之男命を祀っていることから龍神神社と言って間違いないだろう。

 社伝によると、757年に三重・松阪の櫛田神社を勧請したことに始まるとされている。松坂市の櫛田神社の祭神である大幡主大神が天照大神に仕える一族の神であったことから、天照大神も一緒に勧請され、次に941年に小野好古が藤原純友の乱を鎮めるため八坂神社(京都市東山区)に祈願し、平定した後に当社に素盞嗚神を勧請したことが福岡の櫛田神社のルーツという説がある。

 一方で、平安時代末期、平清盛が所領の肥前国・神埼(佐賀県神埼市)の櫛田宮を、日宋貿易の拠点として博多に勧請したのがルーツという説もあり、櫛田神社の宮司らはその説を採用して『博多山笠記録』を編纂し、1965年に文部省(現在の文部科学省)に提出した。『福岡の歴史』(1979年、福岡市発行)にも佐賀県神埼市にある櫛田宮の分社とされている。社殿は戦国時代に荒廃したが、1587年に豊臣秀吉が博多を復興した際に現在の社殿が造営された。

境内7体の龍神

 ほとんど知られていないが、櫛田神社内には7体の龍神像が存在する。櫛田神社に参拝する際、ほとんどの参拝者が利用する楼門の内側上方に1体目の龍神を確認できる。

 普通に参拝していたらその存在にすら気づかない干支恵方盤は、その年の恵方を指し示している。昔は五行、十干、十二支などを組み合わせてその年の恵方を知り、季節を分け、時を刻んだのだという。この恵方盤は内側に東西南北を示し、外側に十二支を配している珍しい干支暦だ。なお、今年は辰年ではあるが矢印は辰の方向を向いておらず、あくまで恵方の東北東を指している。毎年大晦日に宮司が回転させその年の恵方に合わせる。本来の季節の変わり目は節分ではあるが、現代人に合わせて大晦日に回転させ、正月からその年の恵方を知ることができるようになっているとのこと。

 2体目は手水舎(てみずや・ちょうずや)の上方である。3体目は拝殿上方。神社内で神さまが祭られているのが本殿、そして神さまに参るために設けられたのが本殿のすぐ前に建てられた拝殿だ。この拝殿の上部にも龍神が彫られている。なお、ここには風神雷神像も彫られているので、一見の価値があるだろう。4体目は同じく拝殿だが、左側面に飛竜がいる。他と違って大きな翼を広げて飛んでいる像だ。5体目、6体目は北門神扉。上記楼門に向かって右側の北上門。この扉の左右に龍神が彫られている。7体目は同じく北門だが、すぐ横の壁面に仙人が龍神に乗っている像が彫られている。これだけ龍神がいたるところにあれば、何も知らない人でも龍神神社として認識できるのではないだろうか。

櫛田神社の建築様式

 櫛田神社の建築様式は、流造のようだ。流造は神明造(建物の妻面に開口があることから切妻造、平入りで弥生時代の穀倉としての高床建築と類似)から発展したもので、向拝(正面の庇部分)を覆い、母屋の屋根と向拝の屋根が一連のなだらかな曲線を描いているのが特徴だ。櫛田神社本殿は、残念ながら全方位に壁があり、その詳細を見ることができないようになっている。

本殿造
本殿造

【外部ライター・奥野 晃市】

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