2024年05月10日( 金 )

働き方改革を強力に推進し、建設業界の担い手確保へ

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国土交通省九州地方整備局
建政部長 徳元 真一 氏

 地域のまちづくり・すまいづくり、公園・下水道等の整備を担い、建設産業の健全な発展を推進する国土交通省九州地方整備局建政部。現在、建政部として職人不足の問題や防災などについてどのように対応していくのか、今年4月に建政部長に就任した徳元真一氏に話を聞いた。

さまざまな声を聞き、九州の発展に尽力

国土交通省九州地方整備局 建政部長 徳元 真一 氏
国土交通省九州地方整備局
建政部長 徳元 真一 氏

    ──今年4月に建政部長に就任されました。抱負をお聞かせください。

 徳元 私は1998年から2001年まで筑後川工事事務所および本局の河川計画課で勤務していましたので、それ以来、約20年ぶりの九州勤務となります。当時は河川関係を担当していましたが、今回は都市・住宅・下水道といったまちづくり・すまいづくりのほか、建設産業など幅広い分野を担当することとなります。これらの分野を通じて、少しでも九州の発展のために努力してまいりたいと考えています。

 九州のなかでも福岡は、今なお人口が増え続けており、大きな変化と発展を遂げつつあります。その一方で、地方部に目を向けると、過疎化・高齢化の進展が著しい地域もあり、ほとんどの地域では人口も減少している状況です。そのため、福岡一極集中ではない、九州全体の均衡ある発展が必要だと痛感しています。

 また、建設業界については、若手建設技能労働者数の減少が大きな課題であると認識していますが、これに対しては業界の皆さんとともに、処遇の改善や働き方改革を進め、若い担い手の確保を進めていきたいと考えています。

 多くの現場へ出向き、さまざまな方の声を聞きつつ、管内の自治体や関係業界の良き相談相手として1つでも多くの課題を解決できるよう、微力ではありますが尽力してまいります。

担い手確保に、CCUSをさらに推進

 ──職人不足が進んでいます。どのように対応していくのか、お聞かせください。

 徳元 建設産業は、地域のインフラの整備やメンテナンス等の担い手であると同時に、地域経済・雇用を支え、災害時には最前線で地域社会の安全・安心の確保を担う地域の守り手として、国民生活や社会経済を支える大きな役割を担っています。とくに九州は自然災害が多く、即時性が求められる復旧作業において、建設業界の皆さまの協力は必要不可欠なのですが、近年は建設技能労働者が高齢化する一方、それを補う若年入職者は不十分であり、将来の建設業界の担い手を確保していくことは急務であると考えています。

 この解決策の1つとして、若い人にとっての建設業が、もっと魅力的な業種・業界になっていく必要があると考えます。そのためにはまず、建設業における働き方改革をより強力に推進していかなければなりません。長時間労働の是正や処遇改善などの働き方改革のほか、生産性の向上などに業界の皆さんとともに取り組み、より魅力ある産業にしていきたいと考えています。

 具体的には、2024年度から建設業においても罰則付きの時間外労働の上限規制が適用されることになるため、「新・担い手3法」に基づき、工期の適正化や週休2日の確保、施工時期の平準化の推進に向けた取り組みを進めています。工期の適正化については、20年7月に中央建設業審議会が作成・勧告をした「工期に関する基準」において、適正な工期の設定にあたっては、建設業の担い手1人ひとりが週休2日(4週8休)を確保できるようにしていくことが重要であることが示され、この基準を公共工事・民間工事を問わず、周知・要請を行っているところです。

 また、施工時期の平準化についてですが、公共工事では年度内の時期によって工事の繁閑に大きな差が生じます。閑散期には仕事が不足し、収入が不安定となる一方で、繁忙期には仕事量が集中することで、長時間労働や休暇取得が困難となるなどの懸念があるため、県や市町村に対して、平準化に向けた働きかけを引き続き進めていきます。

 建設業の賃金引き上げについても、官民協働で取り組むことが不可欠です。今年2月に斉藤鉄夫・国土交通大臣と建設業4団体との意見交換会が開かれましたが、そこでは、さまざまな課題はあるものの、本年は概ね3%の賃金上昇の実現を目指して、すべての関係者が可能な取り組みを進めることの申し合わせをしたところです。こうした賃金引き上げについての取り組みは、引き続き官民一体となって進めていきたいと考えています。

 また、公共工事の品質確保や担い手の育成・確保に必要な適正利潤の確保を図るため、適正な予定価格の設定・適切な契約変更の徹底や、ダンピング対策のさらなる徹底が必要だと考えています。

 さらに、次世代を託す若い担い手の確保・育成の一環として、建設業界・行政が一体となって高等学校を訪問し、生徒や保護者、教員に対して、建設業の社会的な役割やものづくりのすばらしさを体験してもらう「学校キャラバン(出前授業)」なども実施しています。

筑後川
筑後川

 ──建設キャリアアップシステム(以下、CCUS)の普及および活用促進について、どのような取り組みを行われるのでしょうか。

 徳元 建設業界の将来の担い手確保に向けては、若い世代にキャリアパスと処遇の見通しを示し、技能と経験に応じ給与を引き上げるCCUSの普及は、非常に重要であると考えています。そのためにも、建設業退職金共済制度(建退共)のCCUS活用への完全移行や、社会保険加入確認のCCUS活用の原則化、国直轄での義務化モデル工事実施などの公共工事などでの活用を通じて、引き続き普及を図っていきたいと考えています。

 19年4月のCCUS運用開始から、約3年が経過したところですが、建設技能者の登録数は90.4万人(22年5月末現在)と、まもなく100万人というところまできています。一方で、建設業界からは「CCUSのメリットがわかりにくい」などの意見も寄せられていることから、これらについては引き続き丁寧な説明を重ね、CCUSの普及に努めていきたいと考えています。

【内山 義之】


<プロフィール>
徳元 真一
(とくもと・しんいち)
1968年3月12日生まれ。大阪府出身。1991年4月、建設省(現・国土交通省)に入省。98年4月、九州地方建設局筑後川工事事務所調査課長、2009年4月、中部地方整備局三重河川国道事務所長などを歴任し、22年4月より九州地方整備局建政部長を務める。  

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