2024年05月08日( 水 )

脳卒中治療「当たり前に」、輝栄会病院がSCU開設

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(医)輝栄会 福岡輝栄会病院
副院長 脳神経・脊髄疾患治療本部長
鈴木 聡 氏

 超高齢社会の日本において、年々増加する救急要請への対策が喫緊の課題となるなか、(医)輝栄会 福岡輝栄会病院(中村吉孝理事長/福岡市東区千早)は、2023年4月に糖尿病センターを設立したほか、11月には脳卒中治療における「SCU(脳卒中ケアユニット/Stroke Care Unit)」も開設した。60年以上にわたって地域医療に貢献している、同院副院長で脳神経・脊髄疾患治療本部長・鈴木聡氏に、SCUの役割や今後の展望について話を聞いた。

鈴木聡氏
鈴木 聡 氏

    ──脳神経外科におけるSCUの役割と、開設した経緯をお聞かせください。

 鈴木 福岡輝栄会病院に脳神経外科ができたのは1982年のことで、40年以上の歴史があります。私は10年前に脳卒中センター長として着任し、2020年からは脳神経外科をはじめ、脳卒中センターや脳血管内治療科、機能脳神経外科、脳神経内科、そして回復期リハビリテーション病棟を包括した脳神経・脊髄疾患治療部として新たなスタートを切りました。

 脳神経・脊髄疾患治療部のメンバーは、医師だけでなく看護師やリハビリテーションスタッフ、管理栄養士、ソーシャルワーカーなど、多職種で構成しています。メンバー内で患者情報の共有を日々行い、毎週金曜日には急性期から慢性期患者のゴールをいかに設定するかといったリハビリカンファレンスを行うなど、チーム医療に取り組んでいます。

 そのなかで脳卒中センターは、一般病棟のベッドを併用しながら、脳卒中患者のケアを行う多職種の混成チームとして、ソフト面の充実を図ってきました。19年に当院は(一社)日本脳卒中学会が定める「一次脳卒中センター(PSC)」(※)の認定を受けておりますが、その中核となるのがSCUです。脳血管障害(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血など)の急性期治療を行う脳卒中専門の集中治療室で、当院の南4階病棟に3床のSCUを開設しました(24年4月からは6床に増床の予定)。

新たに開設したSCU
新たに開設したSCU

    ──SCU開設のメリットを教えてください。

 鈴木 SCUでは、2年間の研修期間終了後に脳神経内科あるいは脳神経外科で5年以上の診療経験を持つ医師と、専従の看護師を24時間体制(交代制)で配置しています。来院から治療開始までの時間が短縮できるとともに、集中的により質の高い脳卒中治療を行うことで、脳卒中患者の死亡率の低下や、入院期間の短縮、長期的な日常生活動作(ADL)と生活の質(QOL)の改善を図ることができるというデータが示されています。

 また、SCUの診療報酬はICU(集中治療室)などに準じて高点数で設定されているので、 医療機関としても適正に評価されることになります。

 ──時間が勝負といわれる脳卒中ですが、どのような症状に気をつけたらいいでしょうか。

 鈴木 障害される脳の部位によって、症状は違います。脳卒中を早期に発見するための「FAST(ファスト)」というチェック方法をご存知でしょうか。Fは「顔(Face)」、Aは「腕(Arm)」をちゃんと動かせるか、Sは「スピーチ(Speech)」──つまり言葉の障害がないか、Tは「時間(Time)」──すぐに病院へ、ということです。

 脳卒中は、治療の遅れがその後の人生を大きく変えてしまう病気であり、発症後は一刻も早く病院を受診する必要があります。「FAST」チェックで1つでも当てはまれば、躊躇せずに救急車を呼んで受診してください。

 ──今後の展望をお聞かせください。

 鈴木 当院は、九州大学病院脳神経外科が基幹施設となる研修グループに、連携施設として参画しています。今回の当院SCU開設における専門医の常勤体制は、脳神経外科学のリーダー育成など国民の健康・福祉増進への貢献に取り組んでいる九州大学病院脳神経外科のご協力もあり、実現できました。

 当院のような民間病院と大学病院では、対象とすべき患者さんが違います。大学病院には高度な医療機器や人材が揃っていますが、ベッド数にも限りがありますので、大学病院でしかできない希少疾患や高難度手術を行い、一般的な脳卒中治療は民間病院など市中病院で対応すべきだと考えます。

    ですから、当院の脳卒中診療を、どの市中病院にも引けを取らない得意分野として確立させたいと思っています。そのため、まずは「一次脳卒中センター(PSC)」の次のステップである「一次脳卒中センター(PSC)コア」の認定を、さらにはその最高峰である「包括的脳卒中センター」の認定を目指しております。

 脳卒中は、コモンディジーズ(一般的な病気)といわれるほど、日常的に有病率の高い病気です。その症状を見逃さずに「当たり前の病気を当たり前に治療する」ことが、私たちの最大の役割だと思っています。今後も地域に根差した民間病院として、患者さん1人ひとりのQOL向上を目指した医療を行っていきます。

【松本 悠子】


<プロフィール>
鈴木 聡
(すずき・さとし)
1985年九州大学医学部卒業後、同付属病院で脳神経外科、外科、神経内科、神経放射線科の医師教育を受け、88年より九州大学大学院薬理学教室にて血管平滑筋と内皮細胞の薬理学的研究に従事。学位(医学博士)・脳神経外科専門医取得後、92年より米国ヴァージニア大学にてくも膜下出血後脳血管攣縮の基礎研究。94年帰国後、九州大学病院にて文部教官助手、外来医長、病棟医長を歴任。97年新古賀病院脳神経外科の部長に就任、一般脳神経外科・ガンマナイフ治療に従事。2005年製鉄記念八幡病院にて脳卒中の臨床を中心に脳神経外科診療に従事。14年(医)輝栄会 福岡輝栄会病院・脳卒中センター長に就任、20年より現職に至る。


<INFORMATION>
(医)輝栄会 福岡輝栄会病院

理事長:中村 吉孝
所在地:福岡市東区千早4-14-40
設 立:1961年1月
TEL:092-681-3115
URL:https://kieikai.ne.jp/

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