2024年04月28日( 日 )

志賀島の龍神神社 志賀海神社

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龍神神社?

 辰年の今年、龍神を祀る神社について見ていきたいと思う。その1社・志賀海神社(しかうみじんじゃ)は、その名の通り福岡市東区志賀島にあり、全国の龍が集まる龍の都と称される龍神神社だ。

 インド神話や仏典に登場する「ナーガ」が中国にわたって「龍」になったと考えられており、儒教の経典「書経」では四神・五獣、五龍として「龍」が登場する。日本では、池上曽根遺跡(大阪府和泉市)から胴をくねらせ、三角の無数の突起を持つ動物が描かれた壺が出土しており、これが龍だと言われている。このことから、弥生時代には日本にも「龍」の概念が入ってきていた と考えていいだろう。インドのナーガ、中国の龍、日本の龍の共通点は、水や自然を司る神さまであるということだ。ちなみに「辰」「龍」「竜」の字の違いは「辰」は干支のみに使われ、中国で人々が覚えやすいための当て字という説がある。「竜」は「龍」を簡単にした字、つまり略字なのだそうだ。

1200年以上の歴史

 志賀海神社は、祭神を底津綿津見神(そこつわたつみのかみ)・仲津綿津見神(なかつわたつみのかみ)・表津綿津見神(うはつわたつみのかみ)の三神を奉斎しており、「龍の都」「海神(わたつみのかみ)の総本社」と称えられているという(資料:福岡市)。

 「古事記」「日本書紀」では、神生みの段で禊ぎにおいて住吉三神とともに生まれた神として記載されており、海上守護の神として「万葉集」でも詠まれていた。創建は不明だが、福岡市教育委員会によると、806年には阿曇神に神封八戸が与えられ、859年には志賀海神に従五位上、880年には賀津万神に従五位下の神階が授けられたとなっている。少なくとも1200年以上の歴史を持つ由緒ある神社のようだ。

 実際に志賀海神社を訪れると、摂末社(境内に本社とは別に祀られている社)が多い。摂社(主祭神と関係の深い神さまを祀っている社)が5社、末社(いわばお客さんのように招いた神さま)が19社、合計で24社に上る。かつては375社あった時代もあったという。本社は、表津宮(うわつぐう)、仲津宮(なかつぐう)、沖津宮(おきつぐう)の三社からなっていたが、現在では表津宮が本殿となり、仲津宮と沖津宮は摂社となっている。

 境内にはそれぞれの社に祀っている神さまと御神徳(ご利益)、由緒が記されている案内板が設置されていた。これを見ると、酒造り、五穀豊穣、盗難避け、航海船舶の安全、豊漁、出世開運、合格、縁結び、夫婦円満、開運など、さまざまな神さまが祀られ、たくさんのご利益が書かれている。

 志賀海神社は水の神さま・龍を祀る龍神神社であり、豊漁や五穀豊穣が祈られた。風水では、地中の気の流れのことを「龍脈」と呼ぶ。このエネルギーが吹き出すポイントを「龍穴」と呼び、ここに住むと一族は永きにわたって繁栄するという。このあたりから、出世や夫婦円満、開運などが連想される。さらに、龍は山に住んでいるという言い伝えもあることから、山の神も担っていると考えられる。

 これだけ多くの神さまを祀っていることもあり、年間で大小合わせて70もの祭りがあるそうだ。年頭の歩射祭、「山ほめ祭」とも称され福岡県指定無形民俗文化財に指定されている山誉種蒔漁猟祭、「狩漁の御祭」と称される山誉漁猟祭などがあるが、筆者が注目したのはその神楽であり、そのときに歌われる神楽歌である。「君が代(だい)は千代に八千代にさざれいしのいわおとなりてこけのむすまであれはやあれこそは」(山誉祭 神楽歌冒頭一部抜粋)。日本の国歌である「君が代」に酷似していたのである。一説には、旅芸人が全国に広め古今和歌集に収められ、これが国歌になったともいわれている。

社寺建築の特徴

 志賀海神社の建築様式は、「流造(ながれづくり)」。最もシンプルな神明造(しんめいづくり)から発達したもので、屋根の前方が長く伸びて向拝(正面のひさし)を覆い、母屋の屋根と向拝の屋根がシームレスになだらかな曲線をつくっているのが特徴だ。流造で代表的なものは、京都の賀茂御祖神社本殿だが、日本の神社の大半は流造だと言われている。そして、志賀海神社はこの流造のうち「三間社流造」に当たる。これは正面の柱が4本、柱間の間口が3間(約5.5m)あるものを指す。正面の柱が2本で間口が1つなら「一間社」、柱が3本で間口が2間なら「二間社」と呼ぶ。

 志賀海神社から見える景色は漁村と海、そして海の中道である。昔の人が見たら、海の中道は龍のように見えたかもしれない、と古代に思いを馳せてみた。

【外部ライター・奥野 晃市】

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