Introduction
経済衰退期の慣例踏襲がそのまま売上不振に直結している。従来のビジネスモデルが通用しなくなった。しかし、のたうちながら周りを見回せばたくましい人が無数にいる。陸前高田市は奇跡の一本松がごとく力強い歩みを続けドシドシ打って出ている。売るものがあれば海外にも売り出すたくましさだ。ご当地サイダーをニューヨークで売り、草加市に頭を下げて煎餅のノウハウを手に入れる。戸羽太市長は大きく声を上げて復興に励む。政府とケンカしようがやるべきことをやる。支援の輪は大きく広がっている。未曾有の災害に比べれば中小企業の苦境はいかがばかりか。
地方行政には戸羽市長のような慣例にとらわれないリーダーが増えてきた。過疎化は全国共通の課題だ。震災が時間軸を早めたが、慣例踏襲では地方が滅びると、震えるような危機感を覚えるからこそ、有為の人材が生まれる。
中小企業も、日本経済が沈没中でも、外に目を向ければ無限の市場が広がっている。経営者は会社を潰すわけにはいかない。福岡で、日本で経営が不可能であれば、商品だけでなく事業そのものも海外に移してでも生き抜かなければ。商品ベースでみれば福岡・九州から多くの企業が商品をアジアへ供給している。頼もしい限りだ。破れかぶれでも空気を切り裂く。その破れ目から希望の光が見えてくる。
しかし、破れ目から射す光は、正しく広げていかねばならない。食は環境、エネルギーに匹敵する有望な分野だ。日本の技術、品質、サービスは世界に誇れる。ニューヨーク・マンハッタンでは博多発の飲食店が一大勢力を形成しつつある。これらの分野で運河のごとく才能豊かな経営者が登場している。加工食品においてもここに取りあげた企業のなかには、中小ながら世界で評価を確立した企業群がある。海外進出の先駆者は歴史・奥行き・可能性に手応えを感じている。日本の食分野は世界の期待に対してまだまだ発信不足だ。だが、安直な商品開発や海外進出がむしろ危機を招くことは立証済みだ。取り組むには覚悟がいる。カントリーリスクは日本にもある。激動どころではないことがいつでも起きる。そのなかでも、そこからこそ湯水の如く力がわくことを、陸前高田市の取り組みが示している。
苦境のなかでこそ莫大なビジネスチャンスが発生する。食の可能性は無限だ。日本の未来は食が拓く。