H.I.S.グループ、2020年売上1兆円の布石は?(後)
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2018年も新企画続々
グループ全体で斬新なツアーやサービスの導入など新企画を次々と打ち出すH.I.S.グループ。昨年9月、旅行業界初となる店舗でのビットコイン決済を首都圏内旗艦店9拠点38店舗に導入。昨年11月から沖縄県石垣市と協力し、石垣島創生プロジェクト「世界一提出が困難な婚姻届ツアー」を発売。石垣市役所に婚姻届を提出するまでに、(1)島縦断(約40㎞)、(2)野底マーペ(山)の断崖絶壁クライミング、(3)海底ダイビングによる婚姻届探しの3つのミッションを乗り越える。
また、今年2月からは、関東地区営業所全店にVRを導入。第1弾としてハワイの24ホテルの設備や客室をカテゴリー別にVRで確認できる。また、「変なホテル」から派生した新サービスとして、ロボットがコーヒーの販売・提供を行う「変なカフェ」の1号店が、H.I.S.渋谷本店内にオープン。効率的でエンタメ性も高いとする「変なカフェ」は、旅行窓口の店舗と親和性が高いと考えられており、他店舗での併設が考えられる。
HTBでは、今年3月から、世界初のホテル第2弾となる移動式球体型水上ホテルの実証実験を開始。球体は直径6.4m。1階客室(約28m2)、2階デッキ(約5m2)、定員9名。HTBと無人島の間を移動しながら宿泊するもので今年の夏からの本格稼働を目指す。その無人島に4月28日にオープンする新スポットが「ジュラシック アイランド」。島のなかではAR(拡張現実)スコープ越しに巨大な恐竜が登場。シューティングゲームが楽しめる。地元自治体(長崎県佐世保市)は、HTBへのカジノを含む統合型リゾート施設(IR)の誘致に手をあげており、カジノ効果による集客増への期待もふくらむ。
世界的な旅行業界の好況と新サービスのヒットなどを背景に増収基調にある同社。しかしながら、現況からいって、残り3期で4,000億円を上積みし、売上高1兆円を達成するにはM&Aや他社との連携による業容拡大は不可避だ。同社では昨年9月、インドを拠点にしたオンライン旅行事業を展開するBONA VITA 社の第三者割当増資により株式を取得。20年に海外渡航者2,690万人に達すると予想されるインドの旅行需要に先鞭をつけた。
昨年11月には、カナダを拠点にインバウンド・ツアーオペレーター事業を手がけ、カナダへの観光客を年間30万人以上取り扱っているJonview Canada社の株式を取得して子会社化。北米におけるインバウンド事業のシェア拡大を図る。
さらに今年2月、台湾、香港、シンガポールなど東アジア・東南アジアを中心に体験型オプショナル・プラットフォームを運営する台湾のKKday社の第三者割当増資により株式を取得。KKday社は、80カ国500都市1万種を超える商品を扱っており、自由旅行を好む旅行者からの支持が高い。同社では、ツアー商品のオンライン展開の加速と、KKday社のビッグデータを活用したデジタルマーケティングにも期待を寄せる。格安スマホにも参入
「旅」を中心に事業の多角化を行ってきたといえる同社の新たな挑戦は“格安スマホ”。今年2月15日、格安SIMの販売を手がけてきた日本通信(株)と合弁会社H.I.S.Mobile(株)(東京都新宿区、猪腰英知代表)を設立。同日からH.I.S.のウェブサイトで格安SIMの販売を開始した。
同社が着目したのは、地図、翻訳、通話、カメラなどの機能で旅の必需品となっているスマホ。「格安スマホで、旅はもっと楽しくなる!」をコンセプトに、日本からの国内外旅行、アジアを中心とした市場拡大を見込む。今年5月1日からは、日本で使用しているスマホをそのまま海外でも通信料を気にせず使える、日本初の海外データ通信サービスを開始する予定となっている。敏腕経営者でありながら希代のエンターテイナーともいえる澤田秀雄氏。その側面には合理性を追求する志向があり、独自性(オリジナリティ)にこだわりつつ、必要とあればM&Aも厭わないという、これまでの事業展開によく表れている。澤田氏の不在が試験期間であるならば、その間のエイチ・アイ・エスグループの動静が注目される。“いつもより大人しいH.I.S.”にはならないことに期待したい。
【山下 康太】
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