衰退進む日本型GMS(総合スーパー) 歯止めがかからない現実(前)
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2000年の大規模小売店舗法の廃止により、大型店の出店が郊外に進んだことを背景に、ここ20年、広域から集客する大型ショッピングセンター(SC、ショッピングモール)、大型スーパー、商業施設といった米国型の新しい業態「GMS(General Merchandise Store)」が増加した。一方で、消費量的減少と通信販売の成長といった購入形態の多様化が進み、大型店舗による集客・囲い込み・有力企業との提携が思うような収益効果を生まず、大量閉店も余儀なくされている。これには市場競争を背景に店舗の飽和化など、さまざまな理由がある。
煮詰まった従来型
この半世紀、世を挙げてパーソナル化、つまり個人にシフトしてきた。1970年ごろになると「マイコン」という言葉が世の中に登場した。もともとは超小型のマイクロコンピュータを表す略語だったが、80年代になるとそれは60年代に登場していた「マイカー」のように「パソコン」と呼ばれるようになり、一般化を始めた。コンピュータのパーソナル化はやがて電話のパーソナル化につながった。それまで会社や家族単位で使っていた便利ツールが個人に帰属するようになったのである。携帯電話である。長い間、家庭に1台だった固定電話が1人1台の個人専用が当たり前になった。その影響を受けたのは街角の公衆電話だ。93年にピークの93万台を超えた公衆電話は今や15万台余りと激減している。固定電話も同じである。2001年の6,105万台から昨年とうとう2,000万台の大台を割った。ここ数年こそ、その減少幅が鈍化しているものの、それでも毎年200万台のペースで減少が続いている。そしてこれは個人専用電話がなくならない限り、元に戻ることはない。
合併は劇的な改善につながるのか
チェーンストア理論というのがある。より多くの店(販売拠点)をつくり、より多くの商品をメーカーにオーダーすることで原価を下げ、価格を安くし、さらに売上を増やすという商法を繰り返すことで市場占拠を大きくしていく手法をいう。たしかに、店舗数が少なく、モノの充足が不十分で、来店する客数を多く望むことができる消費量成長期にはこの手法は正しかった。まず、「他人と同じモノを!」というのが当時の消費の主流だった。
しかし、もはやそのような時代ではない。店舗は過剰で、高齢化・少子化・人口減少で消費の先行きも明るくない。なにより、今の消費者に心底ほしいモノがあるのだろうか?かつて消費はある意味で「夢」だった。時代はトヨタ自動車の「いつかはクラウン」(1983年)というキャッチコピーに象徴される。旺盛な消費意欲をもつ団塊の世代はこのとき30代。車に限らず、衣・食・住あまたの商品に若者の夢と欲求があふれていた。しかし、「いつか…」の夢が叶ったどうかは別にして、彼らにもはやモノへの夢はない。そして彼らの子ども、孫の世代の消費形態もかつての若者とは違う。しかも、eコマースによって購買のための選択肢が以前とは比べものにならないくらい多くなった。
消費の量的減少と購入ツールの多様化。そこでは規模を中心にした単純な水平型の提携はもはや思うような効果を生まない。イオン(株)や(株)セブン&アイ・ホールディングスといった巨大小売業のリテール部門の収益性が継続して振るわないことがそのことを物語っている。さらにその原因は単に市場規模の問題だけではない。同じような店が増えすぎた結果、既存店舗の売上を伸ばすことができなくなってきているのだ。対策は過剰になった店舗をなくすことだ。だから、現在の合併は米国のドラッグ企業に見られるように合同後、お互いに競合していた店舗の片方を閉鎖することで効率改善を図るなど必ずしも量の拡大だけを目的としていない。
(つづく)
【神戸 彲】<プロフィール>
神戸 彲(かんべ・みずち)
1947年、宮崎県生まれ。74年寿屋入社、えじまや社長、ハロー専務などを経て、2003年ハローデイに入社。取締役、常務を経て、09年に同社を退社。10年1月に(株)ハイマートの顧問に就任し、同5月に代表取締役社長に就任。流通コンサルタント業「スーパーマーケットプランニング未来」の代表を経て、現在は流通アナリスト。関連記事
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