アスクルとの試合に勝って勝負に負けたヤフー~「ガバナンス(企業統治)に違反する」と大炎上(前)
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「孫個人は投資先との同志的な結合を何よりも重視するため、今回のような手段を講じることについて反対の意見をもっておりますが、このたびの件はヤフーの件であり、ヤフー執行部が意思決定したものです」。
アスクルの株主総会で社長だった岩田彰一郞氏と独立社外取締役3人の再任が否決されたことを受け、ソフトバンクグループは孫正義会長兼社長のコメントを発表した。通信子会社ソフトバンクの子会社ヤフーが、孫氏の意向を“忖度”して強硬策に出たと見られたが、グループ総帥による「反対表明」が、ヤフーとアスクルの関係に影響を与えることになろう。
岩田彰一郞社長の賛成率は20%
アスクルは8月5日、2日に開かれた株主総会での議決権の賛否率を公開した。
創業者の岩田社長と独立社外取締役の再任に反対票を投じたのは、アスクル株の45.1%をもつヤフー、アスクルの出身母体で11.6%をもつ文具大手のプラス、それに資産運用会社レオス・キャピタル・ワークス。投票前から結果がわかっている。
岩田社長にどの程度賛成が集まるかに注目が集まった。岩田社長の賛成率は20%、独立社外取締役3人の賛成率は25~26%だった。
総会終了後に開いた取締役会で、吉岡晃氏が新たな社長兼CEOに就いた。
親子上場の弊害、ここに極まれり
大株主が意のままにならない社長を解任することは珍しくないが、アスクルとヤフーの対立が大騒動にエスカレートしたのは、ともに東証一部上場の「親子上場」の関係にあったからだ。
親会社と子会社がともに上場する親子上場は欧米ではほぼみられない資本政策だ。海外投資家からの非難を受け、最近は親子上場を解消する動きが強まっているが、それに逆行したのが、孫正義氏が率いる東証一部上場のソフトバンクグループ。昨年、通信子会社、ソフトバンクを東証一部に上場させた。中間持株会社を通じて66.4%を保有する親子上場だ。
今年、ソフトバンクは東証一部上場のヤフーを買収して44.6%を保有。ソフトバンクグループからみると、ソフトバンクは子会社、ヤフーは孫会社になる。
完全子会社せずに子会社や孫会社を上場するやり方は、市場から資金を二重取りすると非難されているが、100%保有するより安上がりですみ、主導権を握れるメリットがある。
ヤフーはアスクルの45.1%の株を保有する親子上場だ。その歪な資本構造のなかで、アスクル創業社長の解任騒動が起きた。
経済産業省は6月、上場子会社のガバナンスに関する指針をまとめ、親会社以外の株主の利益保護のための独立社外取締役の選任などを求めた。
ところが、ヤフーは岩田社長を支持した独立社外取締役3人にも反対して、首を切った。このことが、株式市場の大騒動を巻き起こした。
独立社外取締役がヤフーを痛罵
今回の対立のきっかけは、アスクルの個人向けネット通販「ロハコ」事業のヤフーへの譲渡問題だ。譲渡検討を求めたヤフーに対して、アスクルは拒否。これを受け、ヤフーは業績低迷を理由に岩田氏の再任に反対した。
アスクルの独立役員会は7月23日に会見し、独立役員会のメンバーで、指名委員会委員長の戸田一雄・社外取締役(元松下電器産業副社長)は、筆頭株主ヤフーによる岩田彰一郞社長の退陣要求について、「上場企業のガバナンス(企業統治)を無視している」と非難した。
戸田氏は会見で、ヤフーの要求には株主総会直前に本人から辞任を申し出させることで指名・報酬委員会の議論を回避し、トップ人事を決めようとする意図がうかがえると指摘。「(支配株主の意向で)こうも簡単に変わってしまうのか。何のための社外取締役なのかと強く思う」と述べた。
また、独立役員会アドバイザーの久保利英明弁護士は、「ガバナンスというのは資本市場を機能させるために重要なファクターだ」と述べ、日本取引所グループ(JPX)の社外取締役を務める立場として、この問題を「座視しているわけにはいかない」と語った。
(つづく)
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