働き方改革が【匠】を潰す
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ある料理店の料理人が一人前へと成長するための教育プログラムをお教えしよう。皿洗いから始まり、下準備などの雑用、包丁研ぎを経て、調理を行うようになる。包丁研ぎ1つとってみても「何百本、何千本」と人より多く研いだ者が成長するのは必然といえよう。
料理の仕込みから、いよいよ料理人への初期段階へとステップアップする。ここからは努力に加えてセンスが問われてくる。この店では、順調に成長すれば、料理長として1店舗を任せることにしている。
この料理長にまで到達できるのは、10人に1人。「不向き」と判断し、脱落する者もいるし、伸び悩む者もいる。
同じ料理長でも単なる料理づくりに終始するレベルで終わる者(これを料理づくり労働者と呼ぶ)と匠の領域に達する者とに別れる。料理長と呼ばれる5人のうちの1人が、この匠のレベルに達する。「匠」とは自身でメニューを創作できる者を指す。
「働き方改革」は料理を創作する「匠」の誕生を妨げることにつながる。料理人の仕事を単純に労働とみなす「働き方改革の推進」は見習い料理人の成長をストップさせてしまうのである。
また、ホテルなどは料理工程における仕込みなど、少なくとも2工程を外注している。そうなると料理人は全体を把握するのが不可能となってしまう。ホテルの料理長のレベルが今後、大幅に下がることもあり得るだろう。
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