アメリカの長期戦略の凄まじさを知る1コマ
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ある美術家から「米国債を換金してくれないか、できるだろうか」と相談を受ける場に立ち合った。「いかがわしい話ではないか」と当初はうさん臭さを感じていたが、美術家から故事に由来する説明を聞き、背筋が思わずピンと伸びる思いがした。美術家は「この米国債は、佐藤栄作元総理大臣から、『何か役に立つこともあろう』と言われていただいたものだ」と真剣なまなざしで語った。
筆者の友人は米国債の由来書を鑑定し、「驚いた。これは本物だ。1936年に発行された米国債だ!」と興奮気味に大声を上げた。筆者はすぐにその意義を理解できず、「84年前に米国債がなぜ発行されたのか」と問うと、友人は「これは、IMF(国際通貨基金)設立のための軍資金調達に発行された国債だ。アメリカには参った。アメリカのトップらはここまで先を読んで物事を考えているのか」とため息をついた。
筆者なりに、無知丸出しを承知で質問したことだが、友人の説明から以下のことがわかった。
(1)36年当時、第二次世界大戦はまだ始まっていないが、アメリカのトップらは戦後体制をすでに練り上げていた。もちろん、アメリカなどの連合国陣営が勝利することを前提としての構想である。
(2)戦後構想の根本策の1つとして、疲弊が想定される世界経済を立て直す戦略が練られていた。つまり、アメリカは早くから、IMFを創立する構想を確定していたのだ。
IMFを創立するにあたり準備資金が不可欠であるため、資金調達の手段として米国債が発行され、この米国債の一部が、美術家の手に流れていたということだ。その経緯も興味深いが、より印象深かったことは、アメリカが第二次世界大戦前の36年の段階で「第二次世界大戦以降を構想するプロジェクト」をすでに練り上げていたことだ。
このアメリカには、中国もとてもかなわないということを痛感した。
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