ユニデンHD、前代未聞の株主総会 独裁者・藤本前会長と決別(前)
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株主総会の参加は役員のみ。新型コロナウイルスから「生命と健康を守るため」として、株主総会への株主の来場を拒否。ネット中継もなく、後日、結果が通知されるだけ。こんな前代未聞の株主総会を開いたのが、無線通信機器メーカーのユニデンホールディングス(東京都中央区、東証一部上場)。1966年の会社設立から2020年の退任まで55年間にわたって独裁者として君臨してきた藤本秀朗・前会長(86)から決別するためだ。
西川社長、50.52%の賛成を得たが総会後に退任
(株)ユニデンホールディングス(HD)は6月29日、関東財務局に臨時報告書を提出し、同日開催した株主総会での決議事項の賛成、反対の結果を公表した。
第2号議案:取締役6名選任の件(会社提案)
氏名(役職) 賛成率
・西川 健之 (社長、総会後代表取締役会長) 50.52%(可決)
・武藤 竜弘 (CFO、総会後代表取締役社長兼CFO)82.43%(可決)
・高橋 浩平 (取締役、ユニデンジャパン社長) 55.10%(可決)
・高橋 純也 (取締役) 63.48%(可決)
・大里 真理子(社外取締役) 85.87%(可決)
・関 昌弘 (社外取締役) 81.10%(可決)第4号議案:監査役2名解任の件(株主提案※)
・黒田 克司 (公認会計士) 62.57%(否決)
・藤本 節雄 56.75%(否決)(注:CFOは最高財務責任者の略。※は議決権を行使することができる株主の議決権の3分の1以上を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要。賛成の割合が3分の2に達していないため、否決された。)
株主総会では、会社提案の人事案が可決されたものの、西川健之社長(53)の賛成率はかろうじて過半数を上回った。事実上の不信任である。そのため、武藤竜弘最高財務責任者(CFO、45)が代表取締役社長を兼務する人事を決めた。西川氏は代表取締役会長に就いた。
武藤氏は1999年3月、南山大学経営学部経営学科卒。(株)イノアックコーポレーション、(株)ベリングポイント、日本ガイシ(株)、HOYA(株)を経て、2020年7月、経営混乱の渦中にあるユニデンHDのCFOに就いた。今後、武藤社長新体制の下で経営再建が図られることになる。
藤本氏、現社長らの選任反対求める書簡を株主に送付
ユニデンHDは20年に米国子会社で不正会計が発覚し、19年3月期と20年3月期の決算を訂正。不正会計の処理の責任を取り、創業者の藤本秀朗氏が20年10月、取締役会長を退任した。
空席の社長に西川専務が昇格。藤本氏の義弟(妻の弟)。芝浦工業大学を卒業し、94年ユニデン(株)(現・ユニデンHD)に入社。藤本氏は「血族に継がせない」と考えていたため、西川氏は08年リコー(株)に転じた。
15年に持ち株体制に移行。持ち株会社ユニデンHDに社名を変更、事業会社ユニデンジャパン(株)を設立した。その事業転換にともない、西川氏をユニデンHDの取締役に呼び戻した。19年6月から専務に就いていた。
藤本氏は西川氏を傀儡政権として、実権を握ることを狙った。だが、思い通りに経営ができないことに嫌気がさした西川氏は、起死回生策に出る。藤本体制からの決別をうたう「新ユニデン宣言」を21年5月に公表した。
これに藤本氏が激怒。西川社長に対して逆襲に出た。藤本氏は総会前、西川社長と武藤CFOの選任案に反対票を投じるよう求める書簡を株主に送った。20年に発覚した不正会計処理の対応をめぐり、コーポレートガバナンス(企業統治)が進んでいないことを理由に挙げた。藤本氏の資産管理会社であるフジファンド(株)は、ユニデンHD株の8.64%を保有する筆頭株主だ。
経営側は、経緯を調査する第三者委員会の設置などを挙げ、改善していると主張した。西川社長はかろうじて過半数の賛成を得たが、多数の株主が反対票を投じた。不信任を突き付けられた西川氏は社長を退いた。
(つづく)
【森村 和男】
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