2024年11月23日( 土 )

【躍進企業/七呂建設】顧客目線で高品質な住宅を提供 マーケット縮小でもシェア拡大に自信(前)

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(株)七呂建設 代表取締役社長 七呂 恵介 氏

 南国・鹿児島で気を吐く企業が現れた。木造注文住宅事業の(株)七呂建設。県人口が減少するなかでも業績を急伸させており、完成棟数ランキングでは2年連続で県内トップに輝いた(2018~19年度)。県外では熊本市と都城市に営業拠点を置くほか、今年に入っては福岡市に完全オンラインショールームを開設。I・Uターン希望者の家づくり相談に乗るほか、5年後をメドに福岡進出も企図する。好調の要因を3代目社長・七呂恵介氏に聞いた。

高い顧客満足度~35%が顧客からの紹介

 ――七呂建設に社名変更されてから約30年。現体制としての歴史は浅いものの、鹿児島の地場ビルダーとして存在感が増しています。まずは創業の歴史からお聞かせください。

七呂恵介・代表取締役社長
七呂恵介・代表取締役社長

 七呂恵介氏(以下、七呂) 七呂建設前身の七呂組の創業が1960(昭和35)年ですので、創業から数えれば61年を迎えることができました。七呂組は祖父が大工として型枠工事の会社を立ち上げたことに始まります。当時は型枠業者が県内になかったため、福岡など県外の業者に頼んでいたと聞いています。創業以来、型枠工事を主な事業としてきましたが、私が帰郷したことをきっかけにリフォームと太陽光発電事業に乗り出しました。しばらくは私1人で訪問販売をしていたのですが、15年ほど前にイシンホームさん((株)イシン住宅研究所、岡山県津山市)からDMが届いたのをきっかけに勉強会に参加して、家づくりに乗り出すことになります。幸いにもイシンホームさんの商品を販売することで売上を伸ばすことができたので、10年ほど前に型枠事業をやめて注文住宅専業になっています。

 ――創業事業の型枠工事から撤退することは大きな決断だったと思います。下請体質からの脱却は大きな課題ですが、そこは見切りをつけられたということですね。

 七呂 将来性の判断に加えて住宅事業が伸びてきていたので、それと比較しての判断だったと思います。注文住宅は基本的にこちらから値段を提示し、お客さまが他社と比べたうえで判断することになりますが、型枠工事は元請の裁量に縛られることになりますから。

 ――住宅事業に乗り出してからは順風満帆、短期間で急激に伸びて「戸建完工高県内1位」を達成しています。注文住宅事業は当初から順調だったのですか。

 七呂 売上自体は、最初の年は10件もない程度でした。2年目に入っても同じくらいで、3年目でようやく10件を超えることができました。社員を雇ったのは3年目ぐらいからですね。その当時に入社した社員がまだ残ってくれています。私自身は大学で建築を学びましたが、大学では木造住宅など習いませんし、大卒で入った(株)穴吹工務店でもマンション建築の施工くらいしか経験がありませんでした。木造住宅についてはイシンホームさんで勉強させていただき、石原(宏明)代表がドラッカーの「マーケティングとはセールスしなくても済むこと」という言葉をよくおっしゃっていたので、そこを基礎において学ばせていただきました。もっとも、4、5年くらい前からイシンホームさんの家をそのまま販売することはなくなっています。

 ――イシンホームとはフランチャイズ(FC)の関係になりますか。

 七呂 FCに加盟して月会費を払っていて、「これを売ってください」「これは売りやすいですよ」という案内こそ来ますが、それを売るノルマなどはないので、今は自分たちで開発した商品を売っています。2011年にイシンホームさんの「ゼロ円住宅」がヒットした際は当社の名前を出さずにイシンホームさんの名前を使っていましたが、15年くらいからは七呂建設のブランド名で販売しています。

鹿児島市石谷町の本社社屋
鹿児島市石谷町の本社社屋

 ――業績好調の秘訣になるのでしょうか、七呂建設で家を建てた顧客からの「紹介」で家を建てるケースが非常に多いとお聞きしました。

 七呂 おかげさまで、紹介件数はかなり多いですね。ちょうど先日、12年ぐらい前に私が担当したお客さまから「県庁職員の方にプッシュしておいたよ」という連絡をいただいたところです。概ね35%ぐらいがお客さまによる紹介だと思います。

 ――顧客満足度が高いからこそ、紹介件数が増えると思います。どういった部分で好評をいただいているのでしょうか。

 七呂 商品力に加えて「人」の部分ではないかと思います。販売件数が増えると当然、クレームの件数も増えますが、クレームをいただいたお客さまに会いに行ってみると、皆さん怒っているわけではないのです。よくいただく言葉が、「家はいいんだけれど、こんな目に遭った」「家は満足しているから知人に紹介したのに、こんなことがあった」といったもの。いわば新しく宿題をいただくようなかたちが多くて、完全なクレームというのはほとんどありません。

七呂建設で家を建てたT氏邸(鹿児島市)

(つづく)

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<COMPANY INFORMATION>
代 表:七呂 恵介
所在地:鹿児島市石谷町1260-8
設 立:1963年5月
資本金:8,700万円
売上高:(21/4)62億6,000万円
URL:http://www.shichiro.com/


<プロフィール>
七呂 恵介
(しちろ・けいすけ)
1977年生まれ。鹿児島県立鶴丸高校を経て、横浜国立大学工学部建築科卒業。(株)穴吹工務店に勤務後、2000年に(株)七呂建設に入社。営業、専務取締役を経て15年5月に社長就任。一級建築士。

(後)

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