2024年11月23日( 土 )

「見切り発車の川内原発再稼働を憂慮」原子力市民委員会が声明

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
川内原発<

川内原発

 九州電力が8月11日、川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働のため、制御棒引き抜きを開始したのを受けて、原子力市民委員会(吉岡斉座長)は、「問題山積のまま見切り発車」として憂慮する声明を発表した。

 新規制基準に合格して再稼働するのは、同原発が初めて。約2年ぶりに稼働原発ゼロが終わった。川内原発再稼働までに、福島原発事故後の新規制基準の施行と適合性審査の申請から合格まで1年2カ月、合格後の工事計画認可等を経て9カ月の年月を要した。九州電力は、2011年12月の玄海原発4号機の停止から3年8カ月ぶりに稼働原発ゼロを脱した。

 声明は、原子力規制委員会の審査は安全を保証しないとして、(1)基準そのものが甘く、国際水準そのものが旧式炉を含めて合格できる水準であり、強化すべき立地審査指針を無効化し、地震や津波の想定も簡単な補強工事で対応できる範囲にとどめ、火山影響評価では、火山学会の定説に反して、噴火の予兆を把握できるという九州電力の主張を鵜呑みにした、(2)地域防災に関する基準が含まれていない――と指摘。さらに、運転開始から30年の高経年化(老朽化)審査がわずか1カ月のスピード審査で、駆け込み認可されたのは、「旧原子力安全・保安院時代にさえ厳格に守られてきたルールからの逸脱」と批判している。

 原子力市民委員会の見解については「新規制基準による原発再稼働は認められない」と、あらためて表明し、「原子力発電は、他の技術とは異次元の、時間的にも空間的にも並外れて巨大な災害をもたらすリスクを抱えている」てして、特別なリスクを抱える異次元の技術の再稼働を軽々に判断してはならないと述べている。

 原子力発電そのものに対し、「大きすぎる経営リスクとそれに由来する種々の難点を抱えているのを承知の上で、国策によって進めてきた事業」と指摘。「国家政策を転換することができれば途端に立ち行かなくなる虚弱な体質をもつ」「電気は他の手段でも作ることができるので、原子力発電は経済社会の必需品ではなく、無くてもよい技術」だとして、「主権者たる国民が政策転換のきっかけを創り出すことさえできれば、原子力発電は遠からず廃止されるであろう」との展望を述べ、「原発再稼働をできる限り抑え込む」ために、裁判の活用と立地自治体への働きかけを呼びかけた。そのなかで、東電元会長らの強制起訴にふれて、「原発過酷事故を起こせば刑事事件の被告となるリスクを負うことが明確になった」と、電力会社の原子力発電に関する今後の姿勢への影響に言及した。また、伊藤祐一郎鹿児島県知事に対し、拙速だった再稼働同意の撤回を勧めた。

 また、「国民世論の力が今まで原発再稼働を押しとどめてきた」と述べ、「仮に、政府や電力会社などが原発再稼働を強引に進めることになっても、そのスピードをできるだけ遅らせ、再稼働にこぎつける原子炉の基数を少数にとどめることが重要になる。なぜなら原発事故の危険性をそれだけ減らせるとともに、原発ゼロ社会へ向けての政策的な舵取りが円滑に行えるからである」と訴えている

 再稼働をめぐっては、関西電力高浜3、4号機は新規制基準を2番目に合格したが、福井地裁が運転差し止めの仮処分を決定、2015年7月15日に3番目で合格した四国電力伊方原発3号機は工事計画認可等の手続き中。

 

関連記事