戦後70年、中国人戦争被害賠償請求弁護団が声明
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戦後70年を迎える日本に問われているのは、第二次世界大戦の加害者として何を原点に出発したのか、あらためて見つめることである。
戦後70年の節目の年に、日本を起点にした動きが東アジアの安全保障環境に波紋を呼んでいる。一方では、安保法案などの緊張激化の方向があり、一方では、中国人強制連行をめぐる三菱マテリアルの和解案にみられる戦争被害の賠償の動きがある。
日本国民に目を向けても、空襲被害者への政府による賠償は顧みられず、中国残留孤児だった帰国者やその2世3世の多くは「故郷」でありながら「異国」である日本で貧困に押し込められている。国内での空襲被害者に「受忍」を強い、中国東北部に婦女子を置き去りにしたのは、戦争遂行を至上命題とする加害者としての国家体制の結果である。中国人強制連行・強制労働事件などに取り組んできた中国人戦争被害賠償請求事件弁護団(団長・小野寺利孝弁護士)が8月12日、発表した声明は、過去約20年間の裁判の意義をこう述べている。
「加害と被害の事実を客観的に明らかにすることは、被害者加害者間の謝罪や賠償、和解の基礎となるものであり、それが事実認定に関する最高の公権力たる裁判所によってなされた意義は大きい」「特に政府が『慰安婦』問題に関して虚偽を述べながらこれを撤回せず維持し続けるという、信じ難い異常な事態が起こっている現在においては、裁判所による事実認定の意義はなおいっそう大きい」。
多くの判決は、被害者の勝敗にかかわらず、加害の事実と被害の事実を認定している。また、あえて解決を付言した判決もある。山西省「慰安婦」訴訟では、東京地裁は「本件訴訟を含め、いわゆる戦後補償問題が、司法的な解決とは別に、被害者らに直接、間接に何らかの慰藉をもたらす方向で解決されることが望まれることを当裁判所として付言せざるを得ない」と指摘した(2003年4月24日)。
「国策を誤り、植民地支配と侵略戦争を遂行し、アジア諸国をはじめとする各国において甚大な被害を生ぜしめた。また国内にても甚大な戦争被害が生じた」(声明)という日本の加害の事実は裁判所の事実認定によっても明らかであり、請求権を放棄したとか、長い年月がたって請求権がなくなったと言って、解決した問題ではない。
声明は、「今、日本がなすべきことは、中国・朝鮮を仮想敵国視し、日本を再び戦争の惨禍へと導く憲法違反の安保法制を成立させることではない。日本政府がなすべきことは、過去の侵略戦争の事実を客観的に認識し、誤りを認め、深く反省し、被害者に対し、誠実に謝罪することである」と指摘する。
「国家的過ち」を繰り返さないために、加害の事実を風化させてはならない。
【山本 弘之】
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