2024年12月05日( 木 )

【杭打ち偽装】クイ違いで大違い 基礎工事業者の嘆き

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20151120_007 横浜のマンションが傾いた問題で、杭打ち工事でのデータ偽装が連日報道されている。構造設計に詳しい専門家の見解はこれまで報じてきた通りであるが、実際、杭工事を手がけている業者からは嘆きの声も聞こえてきた。

 「言いたいことは山程ある」とある業者は言う。そのなかでも、偽装を疑う心理はよくわかるが、知っておいて欲しいことが工法の違いだという。

 「同じ杭工事といっても、やり方はまったく違うということなんです。例えば、場所打ちコンクリート杭と既製コンクリート杭。問題となっている旭化成建材の工法は後者で、工場で作った既成杭を持っていくやり方。長さが足りない場合には、作り変えに時間もコストもかかる。一方、場所打ちの場合は現場で杭を作成する工法。足りなければ継ぎ足しすればよく、長さが足りないという事態は起こらない。一般の方は知らないでしょうけど、それらを同じ杭工事だと認識しているはず」

 さらに同社が行う場所打ちでは、支持層と呼ばれる固い岩盤まで到達したかどうかは目視できるという。ボーリングで地表まで掘り出したものがブロックとして出てくるからである。さらにその工法では電流計は用いないから、偽装の仕様もないのである。これら工法の違いを知らないこと、杭工事がすべて同一のようにみられることで、今も各方面から問い合わせが来ているという。

 「ゼネコンからの指示で、過去5年間の調査をしなければならなくなった。まったく仕事にならない状態。建設業に身をおいている他業種からも同じように見られている。でも、それは大きな誤解。社員は夜中12時までその作業に追われている。だれがこの労賃を補償するのか」と嘆きは続く。

 工法の良し悪しを単純に比較するつもりはない。どちらにも長所があり、適材適所の選択は必要である。ただひとつ言えることは、どこかで調査を打ち止めしないと、きりがないこと。このままでは建設業界が疲弊するのは目に見えている。


【東城 洋平】

▼関連リンク
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旭化成建材以外の杭工事データ流用問題~ジャパンパイルで6件20151120_007

 

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