2024年11月27日( 水 )

小倉・魚町銀天街から始まるリノベーション活動(4)

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小倉家守構想の提案

資料:「小倉家守構想報告書」より 資料:「小倉家守構想報告書」より

 さて、2010年度に4回開催された小倉家守構想検討委員会における検討から得られた小倉の中心部のあり方に関する提案を「小倉家守構想KTQ Re Innovation 北九州 リ・イノベーション」(北九州市 2011年2月)と題された報告書から紹介します。
 まず、「小倉中心市街地の商業活動が衰退する原因の基となっている産業の疲弊という現象に着目し、これを解決することを目指す」とし、「業種・業態転換、起業支援」「採算ぎりぎりで維持している店舗・企業等のテコ入れ黒字化」などですが、これは言うは易し行うは難しです。しかし、このなかで「遊休不動産活用、不動産事業の採算性向上」については、取り組みやすい項目だと筆者は感じました。
 そこで提案されたテーマが「遊休不動産活用×質の高い雇用創出=産業振興・コミュニティ再生」であり、そのコンセプトが、「KTQ Re Innovation 北九州 リ・イノベーション」というわけです。
 日本の近代鉄鋼産業がこの北九州の地で1901年に始まり製造業のイノベーションをリードして来たことによります。そして「時代は変わり、製造業とは異なるジャンル、より生活に密着したジャンルでイノベーションを行ってゆくことが必要になっている。まちの中に点在する遊休不動産再生とその中身となるコンテンツの創造・更新をイノベイティブに実行することが、小倉家守構想の考え方である」というコンセプトを打ち出しています。

 このコンセプトに基づいて、以下のような仕組みを提案しています。まず、その基本は、次のように集約されています。
 小倉家守構想のリード役と施策化は、北九州市が主導し、実際のプロジェクトは、民間が手を挙げ、これを北九州市がサポートする「民間主導の公民連携方式」を提案しています。この方式により多種多様なプロジェクトを同時並行で進めるべきとの提案も。
 さらに、このプロジェクトの推進には人材の育成が重要であるとの指摘もされています。
 このプロジェクトにより「新しいサービス産業の集積」「サブカルチュアー関連業の集積」「医療・介護関連業の集積」「エコ(eco)なライフスタイル 他」といった目指すべき具体的な産業クラスターの提示もなされています。
 このほか、「小倉家守構想では、多様な都市型産業集積を目指す」として、「医療・介護サービス」「都市観光」「流通新業態」などの各種の都市型産業のイメージが掲げられています。しかし、これはあくまでもイメージであり、それぞれの産業を確立することが並大抵のことではないことは周知の事実です。
 ということで、ここからがこの事業を担当した㈱アフタヌーンソサエティ代表清水義次氏の提案の見せ場になるのです。
 清水氏は、ここで知行合一(真に知ることは必ず実行をともなう。知と行とは表裏一体)という言葉を引いて事業の方向性を提示します。「知行合一するには、高い志と、したたかなソロバンが必要」というわけです。
 「建物を新築することよりも既存の建物をリノベーションして活用する。老朽化した空きビル、空き家、空き店舗を、オシャレに、快適にリノベーションし都市中心部の建物を環境改善する」ことが大事、それが「建築学科を卒業しても就職先のない建築家を目指す若者たちの雇用対策、失業対策を(ほとんど公共の支出なしで)成し遂げる」ことにもなるというのです。
 そして、ここに初めて「リノベーションスクール」とか「クリエーター」「学生」「不動産オーナー」といったキーワードが登場します。
 以下、さまざまな具体的提案が行われていますが、要は、既存ストックを活用してまちづくりにも資するリノベーションを行っていこう、そのためにリノベーションスクールを立ち上げようということです。
 最後に、こうも言っています。「やれることからすぐに始める。空きビル、遊休資産を活用し、小、中、大まで多様なプロジェクトを並行して進めていく。すると、まちに変化が少しずつ現れてくる」と。そして、後日このことが実現する日が来るのです。
 それは、前回(このシリーズ第3回)紹介したこの委員会のメンバーであり魚町商店街に大きな商業ビルを所有する梯輝元氏がこの提案に触発されることによります。そこから、このシリーズの主役である嶋田洋平氏が登場します。
 そのことは、次回に。

(つづく)

<プロフィール>
100609_yoshidaM&R 地域マーケティング研究所
代表:吉田 潔
和歌山大学国際観光学研究センター客員研究員、西日本工業大学客員教授、福岡大学商学部非常勤講師

 
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