2024年11月22日( 金 )

トランプ氏の北方領土カジノ構想 日米ロ3カ国のベンチャービジネスとなるか(1)

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国際政治経済学者 浜田 和幸 氏

 1月20日、米国の新大統領にドナルド・トランプ氏が就任しました。彼がここまで来るまでには何かと言われてきたものです。「トランプ大統領?冗談だろう」という見方が一般的な時期もあったほど。アメリカの主要メディアも大方がヒラリー・クリントン有利との報道でした。

 日本の外務省も、大統領選の期間中に、「ヒラリー・クリントン氏で決まりだろう」と想定して、安倍総理の訪米の際に、クリントン候補だけと会見をセットしました。これは明らかな外務省の判断ミスです。

usa 大統領選挙ではトランプ氏が、前例にとらわれない選挙戦で勝利しました。20日の就任式早々、彼は従来の慣習を次々と反故にし、新たな政策を打ち出しています。選挙戦の公約であった、「アメリカ第一主義」を実践し始めたわけです。初日には「TPPからの離脱」を宣言。外国からの難民の受入れも中止。メキシコとの国境沿いに壁を造ることに固執した挙句、メキシコの大統領との会談はキャンセルしてしまいました。

 トランプ氏は何を考えているのか。その本心は何であるのか。米国内だけでなく、日本、欧州、ロシア、中国など、世界中のメディアが新大統領の胸中を想像し、あることないことを報じていますが、大半は根拠の薄いトランプ評でしかありません。ご承知の通り、彼はツイッターを使い、短いメッセージをよく発信していますが、これだけでは本人の気持ちは伝わって来ません。

 もっとも、彼の発言によって米国の株式市場が左右されることも多くなっています。1月27日、ニューヨークの株価はダウ平均2万ドルを越える大商いが記録されました。トランプ氏の動向を一番気にしているのは米経済界ではないかと思いますが、それだけ彼がマスコミを操る術に長けているのではないでしょうか。このことが彼の自信を深め、ますます過激な情報発信が繰り広げられるに違いありません。

 私は大統領就任前のトランプ氏と個人的にお会いする機会があった数少ない日本人の一人です。彼は日本との関係で、「多くのことを学んだ」と率直に私に語ってくれました。そこで本稿ではトランプ氏の実像について紹介したいと思います。その前に、ロシアについて触れておきます。ゴルバチョフ元大統領は「独裁者的な政権同士では米ロ戦争が勃発する恐れがある」と警告を鳴らしているからです。

 重視すべきはトランプ大統領とプーチン大統領との関係です。お互い相性が良いと言われていますが、まだ二人は会ったことがありません。一度だけ、モスクワで開催されたミス・ユニバースのコンテストに、彼はプーチン氏をメインゲストで招待したことがありましたが、残念ながら直前にキャンセルとなり、プーチン大統領は来られなくなりました。

 これはロシアの国内事情で仕方がないのですが、後で丁寧なお詫びの手紙と、豪勢な民芸品のジュエリーボックスがトランプ氏に届けられました。「将来必ずどこかで会いましょう!」というメッセージであったようです。

 20日の就任式が終わった後、世界のリーダーの中で誰と最初に話すのかが、世界から注目されました。直接会うことになった一番乗りはイギリスのメイ首相でした。電話会談に関しては、プーチン大統領が一番長時間で1時間ほど。安倍総理はプーチン大統領と同じ日に電話会談を行いましたが、その時間は20分ほど。ロシアと比べれば、日本は与しやすいとトランプ氏は判断しているようです。

 とはいえ、大統領選挙後に最初に会見したのは安倍総理でした。あの時には彼の長女、イヴァンカ・トランプ氏が同席しており、話題になりました。「外交官でもなく、政策通でもない彼女が何故?」と騒がれましたが、彼女はファッション・ブランドを経営しており、安倍総理の会見の時は、彼女のブランドの日本進出の契約が大詰めを迎えていた時期でした。

 安倍総理との会見の際、イヴァンカ氏は自分がデザインした洋服、宝石、靴を身に纏って登場しています。これを見た日本のメーカーは彼女の条件に合意せざるを得なかったでしょう。これは利益相反の典型的なパターンと言えるかもしれません。

 トランプ氏は今まで3回結婚し、5人の子どもがいます。母親が違う子どもが一緒の家族にいるなんて、日本では考えられません。しかし大統領選では5人の子どもがそろって父親を応援しています。彼は身をもって「ファミリー」のあり方を有権者に説いたのではないでしょうか。

(つづく)

<プロフィール>
hamada_prf浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。
今年7月にネット出版した原田翔太氏との共著『未来予見〜「未来が見える人」は何をやっているのか?21世紀版知的未来学入門~』(ユナイテッドリンクスジャパン)がアマゾンでベストセラーに。

 
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