現預金は年商の約半分を保有　業界でも一目置かれる存在（前）

2017年12月26日 13:08

ツイート

（株）内藤工務店

　（株）内藤工務店はマンションを主軸とした受注体系をもつ地場ゼネコン。もともと30億円規模の売上実績をもっていた同社だが、近年は好調な市況のなか、代表が先頭に立った積極的な営業を展開したことで50億円台の事業規模に成長。高い利益率を維持、現預金は年収の約半分を保有するなど、強固な財務基盤を形成している。

創業58年の老舗業者2社でグループを形成

　（株）内藤工務店は、創業者である内藤正治氏が1959年5月に建築業を目的に福岡市中央区東湊町で創業したのが始まり。翌60年5月に資本金100万円を基に株式会社として法人化された。68年3月に倉庫、加工場を港3丁目に設置。71年6月に本社社屋が完成した。78年8月、内藤正治氏に死去ともない内藤建三氏が2代目として代表取締役社長に就任。2009年5月には創立50周年を迎えるなど、地場の老舗業者としても知名度は高い。

グループ企業には1987年1月設立の（株）ナイケンホーム（本社：福岡市中央区港2-13-1、梶木敏明代表）がある。主に住宅のリフォーム、増改築工事などを行うほか、修繕工事からバリアフリー工事、太陽光発電の設置まで幅広く手がけ、17年5月期において売上高2億5 、921万円、経常利益1,332万円を計上。自己資本比率60％という強健な財務内容を誇る。

　一方、同業や関係業者、地域とのリレーションシップに対する意識も高い。業界団体では、福岡県建設業協会、福岡県建設業協同組合、福岡建友クラブ、（財）住宅保証機構、（社）福岡県建築士事務所協会福岡支部に所属。経済団体では、福岡商工会議所、福岡中部法人会に所属。また、福岡筑前ライオンズクラブに所属し、奉仕活動にも参加するなど地場ゼネコンとして地域の経済、社会との関係性を重視している。

新青果市場の新築工事で売上高70億円を突破

　同社は創業当初、木造注文住宅の施工を中心に事業を展開していた。しかし、近年ではマンションの建設工事や商業施設、医療介護施設の新築工事といった建築工事を手がけている。とくにマンション工事を得意としており、民間元受の比率が高い。同社の業績推移をみると14年3月期までの10年間、概ね30億円前後の事業規模で推移している。バブル崩壊やリーマン・ショック後など市場が低迷した時期もあったが、同社は大きく落ち込むことなくコンスタントに実績を積み重ねてきた。

　15年3月期以降は、東日本大震災の震災復興需要や再開発需要で建設業界全体が活性化した影響もあり、同社の業績も大きく上向いている。14年3月期の売上高は34億5,588万円であったが、15年3月期は、前期比70.4％増の売上高58億8,972万円、同比183.7％増の経常利益3億3,006万円を計上し、大幅な増収増益をはたした。

　その後も同社の躍進は続く。16年3月期は同社史上過去最高となる売上高72億9,968万円を計上。増収の要因となったのは福岡市東区の福岡アイランドシティ（人工島）に移転・新築された新青果市場の主要工事となる「新青果市場卸売場棟新築工事」。契約金額92億7,150万円という福岡市の大型公共工事で、同社は、大林組を代表企業とするJVに参加し、17億852万円の売上高を計上。これが16年3月期の業績アップに大きく寄与した。

業績上伸の勢いは衰えず利益確保も順調に推移

　17年3月期は、マンション工事などの民間受注が好調に推移し、売上高53億3,968万円となった。減収となるが、16年3月期が大型公共工事の受注による増収であったことをふまえると、実質的には、50億円台をベースとした売上推移は堅調であると考えられる。また、15年期、16年期はコストの圧縮が進まず、粗利率がやや下がっていたが、17年3月期は販管費などが抑えられ、利益率が大きく改善された。経常損益段階では4億8,583万円の利益を計上。同利益率は9.1％と高い数値を示す。直近5期で最高となる当期利益3億1,912万円を計上した。

　好調な業績を背景に、より一層、財務面の強化が進む。資本金は増資を重ねて現在5,000万円。17年3月期時点で、自己資本比率は35.0％（前期30.5％）。現預金は24億5,537万円、月商換算5.5カ月分を確保している。短期借入はなく、長期借入金は1億4,421万円、長短借入金の月商換算は0.3カ月分であり、負担は軽微。借入依存率2.69％であり、資金調達余力は十分といえる。流動比率125.98％、当座比率88.47％と支払能力にも問題はない。

（つづく）
【道山　憲一】