NYレポート~今、ホットなエリアはブルックリンだ!(後)
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世界の経済、商業、文化、ファッション、エンターテインメントなどに多大な影響を与え続けている、アメリカ最大の都市・ニューヨーク。超高層ビルが立ち並ぶマンハッタンの摩天楼などが印象的なこの都市は今、「建築」という側面から見るとどういった状態にあるのか――。世界的な建築家の有馬裕之氏に、ニューヨークの建築や都市計画などの現状について聞いた。
オールドファッションな香りが残る
ブルックリンは、ニューヨーク市の5つの行政区の1つで、マンハッタンの南東に位置し、個性豊かな移民のコミュニティーが点在する活気あふれるエリア。マンハッタンとは違った独特の文化の発信地としても名高い。以前は治安が悪く、貧困層が多く住む地区というイメージのエリアだったが、近年は倉庫を改装したおしゃれなホテルや、こぢんまりとした個性派レストラン、地元密着型のオーガニックフード店や書店、最先端の流行を発信するショップなどが続々とオープンし、一躍注目を集めるエリアとなっている。
「今、ニューヨーカーたちも、ハイライズされてしまった都市部のマンハッタンから周辺部に移動することで、もっと違う価値観を見出そうとしています。ブルックリンは、まだまだこれから住環境としても成り立つし、アートなどさまざまなコラボレートができるゾーンとして、皆が注目しているエリアです」(同氏)。
ビジネス至上主義やリッチテイストが色濃いマンハッタンとは異なり、のどかで気張らない雰囲気が今なお残されているブルックリン。近年はニューヨークのなかでも、最もホットなエリアだとされている。
これからの未来社会を見据えたMIRROR IN THE WOODS
有馬氏自身も、現在ブルックリンで自らのチームを率いて新たなプロジェクトに挑戦している。ブルックリンのゴワナスに構えた「MIRROR IN THE WOODS」は、ネルドリップコーヒーのカフェ&レストランを主体に、クラシックやジャズのコンサートなどのイベントの開催、アートなどのプロダクト展示、建物やインテリアなどの建築プログラム、さらには地域宿泊施設と連携した旅行など、さまざまなプログラムが複合的・有機的に組み合わさった新たな試みだ。
「アートやギャラリー、ミュージックなどの文化的なものは、これから地域を面白くしていくうえで欠かせません。ですが、アメリカでもなかなか日常的に行うのは難しい。そこでこの場所で、飲食ができたり音楽が聞けたりといった、地域の人が集まりやすくなるプログラムで、ここを中心にもっともっとネットワークを面白くできないか、という取り組みです。かつて都市というのは、経済を抽出した時代の象徴でした。効率的な経済主義はある意味では必要ですが、現在はそれだけではなく、もっと多様性を包含した文化的なものや、地域にある独自の個性のようなものを価値として再注目する時代になってきました。本当の意味での豊かさとは場所によって違い、今はそれを皆で問い直す段階に来ています。この『MIRROR IN THE WOODS』は、『コミュニケーション』『パラレルリアリティ』『イメージアビリティ』という3つのキーワードをベースに、地域を世界と結び、多様な人々とつながりながら、ともに共感し感動する―というプロジェクトであり、1つのマイルストーンになるのでは、と思っています」(同氏)。
有馬氏を始め、高い感度をもつ新鋭デザイナーやアーティストなど多くの人々が熱視線を送るブルックリン。世界の最先端都市・ニューヨークは、象徴的なマンハッタンだけでなく、周辺部を含めた広いエリアで、さらなる変貌を遂げつつあるようだ。
(了)
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