2024年11月17日( 日 )

地方スーパーの生き残り策(7)

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想定外の見方

 中国でアリババの金融部門アリペイが通貨革命を起こしている。スマホを使った決済だが、このシステムは0.6%というその手数料の安さと100万件に1件という不良債権発生率で、零細小売店を含む中国全土のあらゆる小売業に広がっていると聞いている。やがて、このシステムは全世界に波及するのかもしれない。変化がどんなかたちで進行するかの好例である。

 同じような現象は小売業の別の部分でも見られる。1994年、シアトルで創業したアマゾンには当初、誰もが冷ややかな目を向けた。書籍の販売からスタートしたが、当時、書籍といえばバーンズ・アンド・ノーブルという世界最大の書店チェーンだった。しかし、アマゾンは97年にジャスダック上場をはたし、初値18ドルの株価が105ドルに上がり、さらに15ドルに下落するといったなかでの大幅リストラ、万年赤字といった荒波をかいくぐり、いつのまにか億を数える取扱商品や巨大な配送システムを構築し、あっというまに巨人になった。

 当然、書籍の巨人バーンズ・アンド・ノーブルは今や風前の灯である。もちろん、紙からデジタルという時代の流れもあるのだろうが、アマゾンの影響は書籍だけでなく家電やファッションなどあらゆる分野に及んでいる。
 eコマース分野に投資を怠った小売業は、まさに苦戦を強いられているアメリカである。では、この現象はアメリカという対岸の火事かということである。
 セブンイレブンを考えるとアマゾンの実情がよくわかる。セブンイレブンはその売上が1兆円を超すのに20年近い期間を要しているが、アマゾンはそれより短い期間で同じ売上を達成している。そして、それは消費の主役が団塊からミレニアム世代に交代するごく近い将来にさらに大きな影響を小売業界に与えるはずである。それだけではない、団塊の世代も外に出てモノを買うというスタイルの変更を余儀なくされるかもしれない。年齢からくる問題で自由に買い物に出かけられないということが常態化するはずだからである。
 こと変化に関しては別な面でも我々を取り巻くそれをあちこちで目にすることができる。たとえば民宿サイトのAirbnb、自家用車をタクシー代わりに提供するUber(ウ―バー)などいつまで対岸の出来事かは誰にもわからない。

 こんな変化にローカル企業は対応しなければならないのである。ではその具体的な方法を考えてみよう。

どうしたら対策になるのか? デジタルからアナログへ

 ハイタッチの体質をつくる。
 大手にできないことをやる
 端的にいえばこの2つである

ルール1 お客さまは正しい。
ルール2 もしお客さまが間違っていると思ったらルール1に戻れ

 アメリカコネチカット州を中心に5店舗を展開するスチュー・レオナルドの店頭に刻まれる有名な社是である。
 この企業だけでなく、消費者から支持の高い小売業はすべてハイタッチの店舗といって過言ではない。トレーダージョーズではたいていの食品を試食できるし、返品も簡単である。
 「いつ買ったのか?」とか「封が明けてあるからダメ」とは言わない。かのノードストロームも同じである。まさにお客がしてほしいことをそのまま実現する。
 彼らの特徴は商品調達に極めて強い意志とこだわりを持っていることである。両店で買い物をすればわかるが、その接客態度はほかの店では見られない。たとえばボードストロームで靴を買おうとすれば、お客が誰であろうと係員がひざまずいて接客する。そして4Eで24.5cmという欧米人の成人には稀なサイズの商品まで在庫している。

(つづく)

<プロフィール>
101104_kanbe神戸 彲(かんべ・みずち)
1947年生まれ、宮崎県出身。74年寿屋入社、えじまや社長、ハロー専務などを経て、2003年ハローデイに入社。取締役、常務を経て、09年に同社を退社。10年1月に(株)ハイマートの顧問に就任し、同5月に代表取締役社長に就任。流通コンサルタント業「スーパーマーケットプランニング未来」の代表を経て、現在は流通アナリスト。

 
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