近づくレッドオーシャン~米巨大DgSに見る次の一手(後)
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米DgS市場、国民医療費に相当
先進国アメリカのDgSの特徴は徹底した規模拡大だ。店舗数はチェーン、独立店合わせて4万6,000店を超え、市場額は4,000億ドル。これは我が国の国民医療費に匹敵する。そしてその半分以上の2,100億ドルを上位5社で売り上げている。とくにCVSヘルスとウォルグリーンの2社の合計は1,785憶ドル。圧倒的なシェアである。
彼らは同業のM&Aはいうにおよばず、医療保険会社、薬品卸会社、簡易クリニックなどの垂直統合を含む規模拡大を図っている。日本のDgS市場は調剤を加えるとおそらく10兆円を軽く超えるが同質競合が限界に達するとき、同じような水平、垂直統合の競争が始まるはずだ。
そのアメリカのDgSだが、CVSヘルスもウォルグリーンも我が国の企業に比べて調剤薬品の売り上げ構成が高い(【表Ⅲ】参照)。平均店舗面積は300坪前後と日本の店舗規模よりやや小さいくらいだが1店舗あたりの売上は2倍近い。これは薬品の売り上げ構成が高いことからきている。その状況は日米各社の売り上げ構成に見てとれる。
店舗あたりの売上が高いということはその経費率に大きく影響する。米国の大手DgSが同業だけでなく、医薬品卸や医療保険会社まで拡大の手を拡げるのは規模拡大による原価交渉力を手に入れ、価格競争力をより強いものにしようとしているからだ。
日本と違いアメリカの医療費は高い。当然、医療保険料も高くなる。保険に入れない所得の低い人の数は相当な数に上る。気軽に医者にかかれないとなると残された道は自己防衛だ。多少の病気は病院ではなく、DgSで薬剤師と相談して自己対応ということになる。
そんなニーズを踏まえて簡易クリニックというスタイルで市場対応しているのがCVSヘルスだ。店内に簡易診療施設を備え、看護師を常駐させて軽い症状の診断、慢性病の治療、糖尿病や血圧、コレステロールなどの検査などを予約なしで行っている。
このような簡易クリニックにはウォルマートなどの異業種も進出しているがCVSヘルスはより高い専門性とより安い薬価を武器に利用者の支持を拡げている。またテレヘルス(TeleHealth)という病院が遠くて来・通院ができない人向けの映像で医師と相談できるというサービスも行っている。そのほかにもいろいろな関連、周辺事業を取り込みさらなる規模拡大と競争力強化に余念がないのがアメリカの巨大DgSだ。
法的規制の問題はあるが、我が国のDgS業界も競合激化に伴って、違う次元へのトライが必要になることは間違いない。今のままでのスタイルでの順調な業績の推移はどう見ても望めないからである。
(了)
【神戸 彲】<プロフィール>
神戸 彲(かんべ・みずち)
1947年、宮崎県生まれ。74年寿屋入社、えじまや社長、ハロー専務などを経て、2003年ハローデイに入社。取締役、常務を経て、09年に同社を退社。10年1月に(株)ハイマートの顧問に就任し、同5月に代表取締役社長に就任。流通コンサルタント業「スーパーマーケットプランニング未来」の代表を経て、現在は流通アナリスト。関連記事
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