2024年12月13日( 金 )

お人好しの福岡県議会議員、怪しい儲け話で次々と大損!(前)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 もはや日常茶飯事とも言っていい地方議員の不祥事。耳を疑う暴言・失言から性犯罪、「業務上横領」といえる政務活動費の詐取まで、政治家以前に社会人としての一般常識が疑われるものばかり。そのようななか、迂闊にも怪しい儲け話に乗って大金を失った地方議員がいた。政治家として人や社会に貢献する前に、まず、自分のことをしっかりすべきだが・・・。

CO2コンサル会社に1億円

▲松尾氏の公式サイトより

 福岡県春日市選出の福岡県議会議員、松尾嘉三氏が、詐欺の可能性もある複数の出資トラブルに巻き込まれていることがわかった。松尾氏は、会社設立への出資や投機的な取引への貸付などで計1億3,000万円を支出。返金を求めて訴訟を起こし、それぞれ勝訴となったが、いまだ相手方からの支払いはなされていない。

 裁判資料によると、松尾氏は春日市議会議員を務めていた2010年3月、当時設立中であった「二酸化炭素排出権に関する調査研究およびコンサルタント業」を目的とする(株)HJP(福岡市博多区)に1億円を出資。出資契約では、同年4月末日から毎月100万円ずつ、松尾氏に支払われることになっていたが、1度も支払われることなく、事業を停止。松尾氏は17年の提訴をもって出資契約を解除した。

 松尾氏はHJP社に出資金として1億円を渡したが、登記上、同社の資本金は5,000万円。残金は出資以外の用途で費消されていた。また、同社の代表取締役であったAは、同社への出資を松尾氏以外にも呼び掛けていたという。

 裁判では被告側は出頭せず、書面などによる反論もなかったため、福岡地裁は原告側の言い分を認め、同社およびAと、さらにフィリピン在住で同社役員のBに対し、それぞれ5,000万円などを支払うように命じた。

 上記の問題の一連の流れは、多くの人が詐欺を疑うだろう。しかし、被害者であるはずの松尾氏は生来の人の好さが災いし、HJP社の話を信じ込んでしまっていたようである。なんと、AとBの知人から紹介された人物に、別の投資話をもちかけられ、まんまと大金を渡してしまっていたのだ。

 別の投資話とは「赤珊瑚転売計画」である。

活動実績不明の映画会社

▲T社ホームページより

 松尾氏から1億円をせしめたHJP社の関係者が松尾氏に紹介したのは、登記上、映画製作などを事業目的とする(株)タイガームービー・ジャパン(福岡市中央区、以下、T社)の代表取締役C。裁判資料によると、Cは、香港で生まれ育ち、02年ごろに日本に帰化した中国人だという。Cを知る人の話では、実弟がハリウッド映画に出演、アクション指導などを行っていると周囲に語っていた。

 Cという人物自体、相当胡散臭いが、T社のホームページも同様だ。ネット上に残っているものの、13年4月30日以降、更新されていない。登記上、09年3月13日に設立されたことになっているが、本店所在地にあるビルの複数の関係者に尋ねると、異口同音に「見たことも聞いたもない」という反応が返ってきた。また、T社は、香港映画界の重鎮とされる有名監督の映画制作会社の日本法人としているが、同社独自の活動実績はどこにも掲載されておらず、不明である。

 T社ホームページに掲載された情報は、前述の有名監督の関連作品の紹介がメイン。同監督のあいさつ(日本語訳はC)には、「(サイトを通じて)より多くのファンの皆さまへ情報を発信し、映画の楽しさをともに感じることができることを願っております」とあるが、ここ数年、発信が皆無という現状から、事実上、事業停止しているといえる。

(つづく)
【特別取材班】

(後)

関連記事