2024年12月26日( 木 )

レオパレス21と、村上ファンド系のレノの抗争は終結へ~レノが突然、振り上げた拳を下ろした!(前)

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 賃貸アパート大手のレオパレス21と、旧村上ファンド系の投資会社レノの対立は、収束に向かうこととなった。臨時株主総会で決着が図られることになっていたが、突然、レノが振り上げた拳を下ろしたのだ。両社が対立する、そもそもの発端は、ソフトバンクグループ=OYO(オヨ)ホテルズアンドホームズの資本提携交渉をめぐってだった。それを詳述する前に、臨時株主総会の開催をめぐるドタバタ劇を振り返ってみよう。

レノはレオパレス取締役全員の解任を提案

 レオパレス21(以下・レオパレスと略)は1月27日、大株主のレノ(東京・渋谷)が開催を求めていた臨時株主総会を2月27日午前10時より、ベルサール渋谷ファースト(東京・渋谷)で開催すると発表した。議案は3件。

 第1号議案(会社提案)は、取締役2名選任の件。

 東洋シャッター元社長・藤田和育氏とパナソニックホームズの元上席主幹の中村裕氏を選任する。

 第2号議案(株主提案)は、取締役10名解任の件。

 対象者は取締役10人全員。宮尾文也社長、蘆田茂常務、斜木克彦常務、岡本誠司常務、早島真由美取締役、児玉正之取締役(社外)、田矢徹司取締役(社外)、笹尾桂子取締役(社外)、村上喜堂取締役(社外)、古賀尚文取締役(社外)。

 第3号議案(株主提案)は、取締役3名選任の件。

 有料老人ホームを運営するシティインデックスホスピタリテイの大村将裕代表取締役、投資会社レノの福島啓修代表取締役、中島章智弁護士を選任する。

 株主提案はレノ(福島啓修代表取締役)と投資用マンション販売のエスグラントコーポレーション(池田龍哉代表取締役)が提出した。福島氏はオリックスの投資銀行部門の出身。エスグラント社はかつて名証セントレックスに上場していたが、経営が破綻し、旧村上ファンドグループに組み込まれた。

 レオパレスはこれまで6月の定時株主総会で社外取締役を過半数とする方針だったが、臨時株主総会に前倒しした。社外取締役を全体の半分を超える7人として企業統治の改善につなげる。他方、レノは提案が可決すれば、村上氏側近の大村将裕氏を社長にする。

 経営権をめぐる争いは臨時株主総会で最大の山場を迎えることになった。ところが、事態は急転する。

ほかの大株主の賛同を得られず、レノは株主提案を撤回

 レノは翌28日、突然、株主提案を修正した。取締役10人全員を解任する株主提案の撤回と、取締役候補3名を選任する提案について、取締役候補を1名(大村将裕)に絞る案に修正した。

 レノは自社のホームページに、株主提案を撤回した理由について、「レオパレスが27日に公表した社外取締役2名を追加するとした案を評価する」とコメントを出した。

 レオパレスは昨年12月16日、社外取締役を過半とする体制への移行を表明しており、いかにもとってつけたような理由だ。

 突然の方針転換の背景に何があったのか。負け戦になることがはっきりしたからだ。

 会社提案と株主提案が可決されるには出席する株主の過半数の賛成が必要だ。レオパレスの株式はレノが14.46%(共同保有分含む)を保有している。

 レノが勝利するには、筆頭株主である国内資産運用会社のアルデシアインベストメント(以下・アルデシアと略、保有比率16.10%)と英資産運用会社オディ・アセット・マネジメント(以下・オディと略、同14.34%)の支持を取り付けることが絶対条件だ。3社で発行済みの株式の約45%を握る。少数株主の賛同を得て、過半数の賛成を得るシナリオだ。

 これまで、アルデシアとオディは態度を明らかにしていなかった。大株主の動向がカギを握ることになった。

 日本経済新聞電子版(1月28日付)は、レノが提案を撤回した理由をこう報じた。

 〈複数の関係者によると、「アルデシアは現経営陣が退陣すると、施工不良問題で国側との調整が困難になり事業改善が進まないことを懸念。全員の取締役解任に難色を示した」という〉

 アルデシア(山崎拓也代表取締役)は18年4月に設立された新しいファンド。経営に問題があって株価の低迷する企業に投資する逆張り投資家。レオパレス株への投資が最初の大型案件だったのではないか。買い増して筆頭株主になった。施工不良問題が解決して、株価が上昇する局面で、高値売り抜けを狙うのがシナリオだ。そんなアルデシアにとって、レノの取締役全員解任案は何の得にもならない。

 アルデシアが抜けては、レノに勝ち目はない。負け戦はしない。グループの総帥、村上世彰氏が撤退を決断したことは間違いなかろう。

 しかし、自分が仕掛けた臨時株主総会の開催が決まったのに、「いち抜けた」と下りたのだ。レオパレスならずとも、あっけに取られたのも無理はない。正式に株主提案した以上、取締役10名全員の解任に、どの程度の賛成が集まるか勝負すべきだ。勝ち目がなさそうだから、やめましたでは、身勝手にも程があり、村上氏の信用に傷がついた。

(つづく)
【森村 和男】

(中)

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