2024年12月22日( 日 )

河村恭輔・勝美夫妻が築き上げた経営の真髄とは(後)

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ゼオライト(株)

 良い水創りに人生を捧げた河村恭輔名誉会長。恭輔名誉会長は人生の幕を下ろすまで、会社の行末を案じていたという。良い水創り・人財(ひと)創り、技術革新一筋に生きた恭輔名誉会長。恭輔名誉会長を献身的に支え、現在のゼオライト(株)における経営体制を作り上げた河村勝美会長。恭輔・勝美夫妻が苦楽をともにしながら、お客さまと社員の幸せを第一にした軌跡と経営の真髄を綴る。

勝美氏の社長就任

 顧客への直接営業が軌道に乗りながら、さらなる発展を視野に入れた同社。04年9月に、恭輔氏の妻である河村勝美氏が代表取締役社長に就任。就任以前も恭輔氏を陰で支え、同社の営業の最前線に立って陣頭指揮していた。勝美氏が社長に就任したことで、恭輔氏はより水と技術革新へ没頭できる時間が創出された。

 水事業(地下水)における提案型営業が全国に浸透し始めた時期であり、また専用水道(水道法の定義:寄宿舎、社宅、療養所などにおける自家用の水道その他水道事業用に供する水道以外の水道)へのプラント施工が増大し始めた。

 勝美氏社長就任から5年後の09年から、J-Power(電源開発(株))をはじめとした国内業界の大手企業との取引が始まり、全国展開が本格的となった。勝美氏が社長に就任してから、ほぼ毎期1〜2億円ほど売上高が上昇していく。勝美氏が従来にも増して、自らトップ営業を実践し、技術と品質の向上は恭輔氏が日々研究開発に尽力した。社内での役割が一層鮮明になり、恭輔・勝美夫妻は寸暇を惜しみながら同社発展に力を注ぐ。

 技術がわからない、タバコもお酒もゴルフもしない、そんななかでどうやっていけばよいかと考えた末に、勝美氏は08年より5年間に渡り、「感動学」を学びお客さまのおもてなしと感動をお届けする「ありがとう経営」を実践。これが業績向上の一役を担い、会社が飛躍する大きな原動力となった。さらに14年より京セラ創業者の稲盛和夫氏が全国で開塾している「盛和塾福岡」に入会。兼ねてより恭輔氏も尊敬していた稲盛氏の「盛和塾」だったため、社内でも京セラの仕組みをどんどん取り入れていき、アメーバ経営やフィロソフィの浸透など、勝美氏による精力的な社内改革の取り組みが実を結び、企業として熟成されていった。

 18年8月1日には、勝美氏の起案により「ゼオライトフィロソフィ」を作成。この「ゼオライトフィロソフィ」には、恭輔氏と勝美氏の創業からの命懸けの経営のなかで、身をもって経験した苦労や体験、教訓を文書として残し、ゼオライトが100年企業を目指すための指針となるよう願いが込められている。

 このような夫妻の仕事ぶりを側で見ていたのは、現・代表取締役社長・嶋村謙志氏をはじめ、役員・幹部たちだ。彼らは、恭輔・勝美夫妻の経営志向を正しく理解し、一般社員たちに伝えて、実務に反映させ続けた。08年12月に東京営業所(現・東京支店)を開設し、東京および周辺地区と東京以北の市場を着実に開拓していく。東京進出を本格化させてから売上高は20億円を超えて、業界大手との取引も増大し続け、10年7月期より7年間、水のリーディングカンパニーとしてのブランディングが確立していくこととなった。

ゼオライト業績推移とトピックス 同社のブランディング確立の証の1つがメンテナンス事業部の実権である。同社プラントのメンテナンス事業は、遠隔システムにより全国約300カ所で管理され、24時間365日年中無休で稼働し、定期的にメンテナンスが行われる。水質検査・管理をはじめ、ネット回線を使った監視システムによる原水や処理水量、さらには薬品残量の監視、装置運転記録などを集計し、稼働状況の把握や消耗品の交換予測を実行する。そして同社のメンテナンス事業は、基本すべて自社管理である。自社でのメンテナンスが同社の強みであり、顧客からの厚い信頼を得ている。

 生前恭輔氏は、「将来、メンテナンス事業が総売上比率の50%以上が理想」と掲げていたが実際は、 同社の中核を担う事業として上昇し続けている。東京進出の同時期から、メンテナンス事業の売上高は総売上高比率50%を超えており、直近においても継続している。恭輔・勝美夫妻は顧客訪問した際には必ずプラントの周辺を自ら掃除し、機器を拭き取るなどメンテナンスの大切さと基本姿勢を、自ら率先垂範して次世代を担う人材へ伝えていったのである。

次世代へ託し新時代へ

 16年8月に嶋村謙志氏が代表取締役社長に就任し、勝美氏は代表取締役会長、恭輔氏は取締役名誉会長に就任し、同社の新たな時代が幕を開けた。

 役職が変わった後も、恭輔氏は水と技術の新たな開発と研究に勤しみ、勝美氏は後見役として、嶋村氏を支える立場となった。経営の第一線から退いた後も、次世代の若き経営陣や幹部を陰で支える恭輔・勝美夫妻。水・お客さま・取引先・社員と仲間を、心から愛する恭輔・勝美夫妻の在り方は称賛に値する。

 経営においては、業績および財務体質を安定・健全にしながらの舵取りが求められる。他方、単なる「銭勘定」の経営では、顧客からの高い信頼を得ることはできない。恭輔・勝美夫妻のように、お互いの立場を認め合い、それぞれができることに最善を尽して、すべてにおいて愛を注いで邁進することが経営の真髄だということを自らが証明し、次世代へ引き継がれた。

 同社のより進化した事業展開を、恭輔氏は天国から見守っている。

(了)

【河原 清明】


<COMPANY INFORMATION>
代表取締役会長:河村 勝美
代表取締役社長:嶋村 謙志
所在地:福岡市博多区那珂5-1-11
設 立:1970年8月
資本金:9,000万円
売上高:(20/7)32億5,000万円
TEL:092-441-0793
URL:https://www.zeolite.co.jp

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