シェア争いが激しい韓国フードデリバリー市場(前)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏
韓国人の日常生活は、コロナ禍で変化を余儀なくされている。そのなかでも、飲食店利用の減少と在宅時間の増加により、食生活に大きな変化が起こり、フードデリバリーアプリ市場が急成長を遂げている。
フードデリバリーアプリ市場の成長の背景には、不特定多数が利用する飲食店で食事することによる新型コロナウイルス感染への懸念と、スマホの普及によるフードデリバリーサービスの利便性の向上があるのはいうまでもない。
人々は外食より出前を好むようになり、フードデリバリーアプリの新規加入が急激に増加している。新型コロナウイルス感染拡大で、利用率が増加したアプリのなかでも、フードデリバリーアプリは41%という圧倒的に高い利用率を誇っている。
実はコロナ禍以前にも、フードデリバリーアプリの成長をけん引する社会の変化があった。一人暮らしが増加し、ネットショッピングの利便性を経験した顧客は買い物だけでなく、スマホの出前サービスの潜在的なニーズをもっていたことだ。
韓国で一人暮らしの家庭は2014年には414万世帯であったが、19年には615万世帯となり、全家庭の30%を占めるほどになった。ネットショッピングの売上高も年々増加し、19年の取引額は134兆ウォンを上回るようになった。
フードデリバリーアプリとは、スマホを活用して出前を注文できるアプリだ。以前の韓国では、出前の代表といえば中華料理であり、配布されたチラシを見て電話で注文をするのが一般的であった。それらの出前は料理の種類が限定されており、店で雇用した配達員が届けていた。
しかし、フードデリバリーアプリが登場したことで、飲食店は配達員を直接雇用しなくてもよくなり、配達アプリに加入することで売上を増やすことができるようになった。顧客も注文できるメニューの種類が増えて、アプリを使うことで現金をもっていなくてもクレジットカードで簡単に決済できるようになった。
韓国のフードデリバリーアプリ市場は、人口は少ないものの世界5位以内に位置付けられるほどに発達している。日本と韓国では日々の食事は手づくりが良いという考え方が根強いが、最近の韓国の若者は、食事をつくるより出前を頼む傾向が強くなっている。仕事終わりにスーパーで食材を買って料理をつくるより、プロの手を借りたほうが断じていいと考えるようになったからだ。
フードデリバリー市場は、ユーザー、飲食店、デリバリーアプリ会社、配達代行会社、配達員で構成されている。韓国政府の統計によると、20年のフードデリバリー市場規模は20兆ウォンに達したという。05年の市場規模は1兆ウォンにすぎなかったが、10年頃から急速に成長をはじめ、15年で20倍の成長を遂げている。20年のデリバリーアプリの決済金額は7兆6,000憶ウォンを上回る。加えて、フードデリバリーの配達に従事している人は13万人と、雇用創出に寄与している。配達に従事する13万人のうち、8万3,000人は配達代行会社に所属しているが、その他は個人でデリバリーを受託している。
(つづく)
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