2024年11月23日( 土 )

生保大手が地銀株売却へ~九州地銀の今期の先行きは?

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 6月6日付の日経新聞(朝刊)の1面に掲載された「生保、地銀株を売却 今年度 日生や第一、数百億円」の見出しが目にとまった。以下に記事の一部を引用する。

 生命保険大手が保有する地方銀行株の削減に乗り出す。日本生命保険は2021年度に200億円以上を売却する方針。明治安田生命保険も削減の検討を始めた。第一生命保険は売却対象の地銀に対して今後通知する。大手各社の21年度の売却額は合計で数百億円規模になる見通しだ。
 地銀株の多くは長らく株価が低迷しており、生保の資産運用成績を下押しする面があった。生保大手は地銀との関係見直しに着手する。地銀株を安定的に保有してきた大手生保による売却が進めば、地銀の再編につながる可能性がある。

 【表1】を見ていただきたい。上場している九州地銀の大株主10社のうち、生命保険会社の保有株式の状況を示している。

~この表から見えるもの~

 新聞報道を受けて、7日の九州地銀の株価は、取引のなかった福証上場の南日本銀行を除く全銘柄が前日比マイナスとなった。

 大きく値を下げたのは西日本FHで、前日比▲16円の665円(同2.35%減)。次が九州FGで同▲7円の410円(同1.68%減)。佐賀銀行は同▲18円の1,385円(同1.28%減)となっており、ここまでが1%以上の下げ幅となっている。

 ふくおかFGの株式を保有しているのは日本生命、明治安田生命、住友生命、第一生命の4社で最多。7日の株価による時価合計は313億2,693万円となっている。

 九州FGの株式を保有しているのは明治安田生命1社で、時価額は76億1,288万円。北九州銀行を傘下に置く山口FGは日本生命と明治安田生命の2社が保有し、時価額は66億8,104万円。西日本FHは山口FGと同様、日本生命と明治安田生命の2社で、時価額は44億628万円となっている。

 南日本銀行は明治田生命と朝日生命の2社で、時価額は31億180万円。大分銀行は日本生命、明治安田生命、大同生命の3社で、時価総額は25億3,802万円に上る。

 佐賀銀行は日本生命、明治安田生命、住友生命の3社で、時価総額は20億1,794万円。宮崎銀行は日本生命、明治安田生命の2社で、時価総額は17億9,724万円となっている。

 日本生命など生命保険会社6社の7日の株価による九州地銀(含むFG・FH)の時価総額合計は594億8,213万円に上る。

 【表2】、【表3】の通り、8日の日経平均株価(前場終値)は小幅な値下がりとなった。九州地銀の株価は高安まちまちの動きとなったものの、ふくおかFGが前日比25円プラスの2,022円と値を戻しているのが目を引く。

まとめ

 日本生命保険は40行超の株式の売却を決め、売却予定の地銀にはすでに通知しており、第一生命は売却する銀行に対して今後通知するという。明治安田生命は売却の検討を始めており、ほかの大手生保も追従することになりそうだ。

 生保による株式売却が銀行にとって大きな負担となるのは、売却株数が多いためだ。仮にA生命保険会社がB銀行に30万株の売却を打診してきた場合、B銀行は30万株を引き受けてもらう取引先を探すことになる。30万株を1社で引き受けてもらうことができれば、指定された日時に相対取引することができる。

 しかし、20万株の応諾を受けた場合、残り10万株の引き受け先を探さなければならない。問題は数社の生命保険会社から100万株単位の売却の申し出を受けた場合、銀行首脳部はコロナ禍にかかわらず、多くの株式引き受け先を訪問して説得するなど、大変な労力を要することになる。

 はたして九州地銀の株価は、今期どのような動きを見せるのだろうか。

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【(株)データ・マックス顧問 浜崎 裕治】

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