「韓日関係の真の和解と友好は九州から」 九州の両国友好親善の基盤をさらに強固に(後)
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新型コロナウイルスの影響で人的往来が大幅に制限され、大きな影響を受けている九州―韓国関係。昨年、駐福岡大韓民国総領事として着任した李熙燮氏は、コロナ禍でも日韓社会の将来を展望し、草の根・民間レベル、自治体レベルで多分野の交流を促進することにより、日韓関係を先導することを提唱する。李総領事に話を聞いた。
新たな発展モデルを模索、デジタル化で日韓連携を
――コロナ禍は韓国にどのような変化をもたらしていますか。
李 コロナ禍による社会変化は、大きなデジタル転換の加速化と脱グローバル化に表れていると思います。脱グローバル化の加速化にともない、世界の貿易・経済の秩序も転換期を迎える可能性が高いでしょう。このような変化は輸出主導型の韓国経済には相当不利に働くと予測されます。従って韓国はポストコロナ時代の変革に備え、昨年にはデジタルニューディール政策とグリーンニューディール政策を2つの軸として打ち出し、先導的な発展戦略を確立して推進しようとしています。
デジタルニューディール政策は、電子政府・サービスなど韓国の強みである情報通信技術(ICT)を基盤とした経済全般に革新と躍動性を広くもたらすものであり、グリーンニューディール政策は、コロナ禍を契機に気候変動への対応と低炭素社会への転換がより急速に求められるという時代の変化に応じたものです。韓国政府は5月末に世界から総勢68名の首脳クラスと国際機構首長を招いて、気候・環境分野の多国間首脳会議「2021P4Gソウル首脳会議(ソウルグリーン未来首脳会議)」を開催しました。
ポストコロナ時代に起きる世界秩序変革に関連して関連して予想されるもう1つの大きな変化は、技術覇権をめぐる米中間のグローバル競争の激化です。韓日両国が政治的葛藤にばかり焦点を合わせ続ければ、技術覇権を争う米中に隷属する可能性もあるでしょう。日本は今年デジタル庁の設置をはじめとする関連法の整備を行うなど、デジタル計画を加速化しています。韓日両国は4次産業革命時代に技術協力で相互補完し協力できる部分が多くあり、相互協力を通じて、米中とは異なる第3の軸の形成も模索できると捉えています。韓日関係が政治的葛藤を克服し正常な軌道を探るとすれば、このような技術協力は両国に共生と共同繁栄の促進をもたらす核心的要因になるのではと考えています。
――韓国のサービス産業はどう変わりましたか。
李 コロナ以降、伝統的な対面サービスから非対面サービスへの転換が急速に進み、オンライン化とデジタル革新の加速にともなう個人主義志向と、IT技術などを活用したデジタルトレンドが最近のニューノーマルとなっています。これは韓国のみならず世界に共通する現象でしょう。
このような傾向により、韓国の一般市民の間でもオンラインショッピング、eコマースなどが活性化され、オンライン教育、遠隔治療およびスマートヘルスケア、スマートバンキングおよびフィンテック、オンラインゲーム、ウェブコミック、動画視聴などが日常化しています。たとえば宅配サービスを利用して、生鮮食品やレトルト食品を自宅に居ながら消費する機会が多くなっています。また、業務形態の変化としてオンライン会議、業務メッセンジャーなどの拡大が挙げられます。これらに関わる産業分野が急速に成長しています。
――昨年、韓国の人口が減少に転じました。
李 韓国の人口減少は当初の政府予想より10年以上早く訪れており、いわゆる「人口絶壁」という用語が日常化するほど深刻な状況に陥っています。昨年の合計特殊出産率は0.9で、OECD加盟国のなかで最下位であり、1.0を下回ったのは韓国のみでした。
人口減少は、消費マインドの萎縮、成長への活力の低下、財政および社会保障システムの悪化、自治体の消滅など、多方面にわたり国家経済を脅かす影響をおよぼすことが予測されます。「人口減少-経済の萎縮-雇用悪化-少子化-人口減少」といった悪循環を断ち切ることが重要な課題であり、総合的な対策を長期的な視点で講じることが大事です。
韓国は人口減少の根本原因である低出生率問題の対策をはじめ多角的に努力を行っていますが、少子高齢化のスピードが速いため対策への効果を実感できていないのが実情です。一方で、先進国のなかで最も早く少子高齢化に直面し、2005年には人口が減少に転じた日本は、内閣において少子化対策担当大臣、一億総活躍担当大臣を設け、総合的かつ体系的な政策を行ってきました。このように日本と韓国は少子高齢化と人口減少という共通の課題を抱えており、官民一体となって共同研究ならびに協議を活性化すべきだと思います。
(了)
【茅野 雅弘】
<プロフィール>
李 熙燮(イ・ヒソプ)
1962年生まれ。85年延世大学校卒業、87年外交部入部。北東アジア課長、駐オーストラリア大使館公使参事官、駐インドネシア大使館公使、大統領秘書室勤務、駐日本国大使館公使などを経て、2020年11月に駐福岡総領事として着任。関連キーワード
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