山口FG・吉村猛会長、平取締役降格~「田舎芝居」を観覧しての所感(4)
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山口FGの近未来、買収されるのみか
頭取が田中耕三氏から2人挟んで吉村猛氏へと続いた山口銀行および山口フィナンシャルグループの近未来はどうか。厳しい予測であるが、ほかの強力な金融グループに飲み干されてしまうしかない。その理由について述べる。
1点目に、田中氏と吉村氏に共通した認識を挙げることができる。銀行は世の中に、社会に永遠に君臨できると錯覚していることだ。「金を貸してやる」という優位性は揺るがない。だから何をしても構わないという過剰な慢心がある。まったく浅はかな2人である。
日銀の金融政策は長期にわたって、経済政策を優先するものであり、ゼロ金利政策も押し通してきた。その結果、銀行の経営は収益を上げられない厳しい状況に追い込まれた。決算の内容もその時期の株の評価次第で決まるようになった。
これに加え、無借金の中小企業が続出し始めた。銀行に頭を下げる必要がなくなったのである。第一地銀は自分のおひざ元(山口銀行は山口県)で稼ぐことができていた。ところが、人口減により地域の経済力が急速に衰退。地元以外への攻勢が必要となったわけである。この厳しい経営環境を直視することから2人とも逃げてきたといえる。
2点目に、2人とも経営者としての尊厳と気品が皆無だったことが挙げられる。経営者として無能であったということである。尊厳と気品があれば、経営者は社員から、お客から、地域から尊敬されることを意識するはずだが、残念ながら無頓着であった。ただ、田中氏と吉村氏には決定的な違いがあった。田中氏は老獪で、忠実な部下たちには餌を与えて巧妙に忠誠心を引き出してきた。一方、吉村氏は忠臣と目される連中への配慮に関心がなかったのである。
経営能力の欠如は、行員たちの敢闘精神を燃焼させる術がないということだ。前回(*3のこと)、ふくおかFGの躍進の背景を紹介した。トップが率先垂範することで、行員たちの士気を鼓舞することに成功したのである。だからこそ組織が強化された。行員たちの能力を引き出して業績向上につなげるという視点が、残念ながら吉村氏にはなかった。経験していない、勉強していないということであろう。旧山口銀行にはトップの育成マニュアルがなかった証ともいえる。
かつての行員がもっていた銀行への強い帰属意識と忠誠心は、地域一番の所得によるものだった。しかし、所得増は期待できない、組織トップは女にうつつを抜かす、評価査定の客観性もないとなれば、若手は転職の道を選ぶ。残った行員たちは上位下達の命令に慣れきっている。彼らの意識改革は容易でなく、前途多難である。不満を外部へメールで届けることくらいしかしないだろう。
山口FG、山口県内だけでは生き残れない
吉村氏には、ある福岡の経営者の意見を伝えたい。吉村氏に4度会ったことがあるその経営者は、「驚いた。聡明な会長という印象を抱いていたのだがね。今どき、中小企業のわがままなオーナー経営者でも、会社で自身の彼女の勝手な振る舞いを許すことはない」と率直に話す。45年前の山口銀行博多東支店が懐かしい。当時、行員たちは必死で新規開拓に励んでいた。筆者も20社ほど開拓に力を貸した。
山口FGの北九州銀行の得意先に対する福岡銀行の攻勢にも目を見張るものがある。少なくとも福岡地区でのシェアが減っていくことは間違いない。
今回の“田舎芝居”を観覧した印象は次の通り。
(1)当然だが、やはり住友銀行のスキャンダルはケタ違いに大きい。
(2)トップの経営能力次第で、銀行経営の結果に比較にならないほどの差が出る。
(3)山口FGは山口県内だけでは生き残れない。(了)
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