2024年12月22日( 日 )

老化は確実に進む(10)生存権の行動発揮が救い

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社員集団退社を強行する

人が去ったオフィス イメージ 「よくまぁ、社員たちはガマンできるものだ」と疑問を抱く不思議な会社、A社があった。なんといってもオーナーが好き勝手に物事を行う。例えば、会社に彼女を連れ込んでいちゃつく。社員を意味なく叱る。毎晩酒を飲み歩く。「これではやっちゃおれないと怒りを感じるはず」と確信を抱いた。ある日、A社に立ち寄ったところ、今まで見かけた女性社員がいない。社員の数も3名しか見当たらなかった。そのうえ、皆見かけない人たちであり、最近採用されたように感じた。とっさに異変を感じ、社員たちが辞めたのではないかと直感した。

 探ったところ、集団退社が起きていたことが判明した。関係者の証言によると、元社員たちはオーナーの素行・言動に愛想を尽かしており、古参幹部たちを罵倒したり降格させたりするという支離滅裂の言動に不安を覚えたようだ。そこで、みなで打ち合わせ、給料と退職金をもらって退社したという事実をつかんだ。少なくとも事務スタッフは全員退社したという。オーナーといえども、社員の生活を守るという使命を忘れて遊び惚ければA社のように社員の集団脱走が起きることを覚悟しなければならない。社員たちが基本的生存権を発動したケースである。

内部告発も当然の権利

 山口FGにおいて吉村猛氏が株主総会後の取締役会で代表取締役を剥奪されて平取締に降格された。本人の人生にとって初の驚愕、絶句となる経験であったであろう。本来ならば反吉村派は取締役の地位も剥奪したかったのであろうが、取締役会にはそれを決定する権限はなく、平取締役への降格という策に甘んじた。この作戦は4月頃から練られていたと語られている。吉村前会長の素行に関しては、当社がかねてより指摘してきたことである。関係者から「山口FGの行員たちの執念の勝利であった」と淡々とした様子で聞いた。

 当社のNet IB Newsには毎日、10件を超える読者メールが届く。見当違いのご意見、頼みごともあるが、山口FG関係者からの投稿はいずれも切実なものであった。「このような銀行に在籍していること自体が恥ずかしい」と悶々とした心境を綴るものもあった。「転職することにした」というのもあった。天下の山口FGを辞めるとは凄い覚悟である。「これは組織として末期状態にある」と直感した。吉村会長に対する評価は、彼の不倫、無頓着な経営姿勢にほとほと愛想を尽かしたというレベルを超えており、「この会長は馬鹿だ」と烙印を押すレベルといえる。

 「吉村氏、平取締役へ降格」という情報を淡々と聞いたと記述したが、9名の取締役全員が吉村氏の代表取締役就任に反対したことには驚いた。社外取締役は吉村氏に抜擢されていたから謀反を起こすことは予測していなかったからだ。彼らも社内外からの批判の声を耳にして、傍観すると自身の信用に関わると計算し始めたのであろう。社外取締役は結構な収入があり、楽なポストだ。「もう1社、声をかけて貰いたい」と計算したかどうかは定かではないが、ここは上手に立ち振る舞おうと考えたのであろう。欲得に関係なく、社外取締役7名の英断には拍手喝采を贈る。とはいえ、本当に吉村氏が権力を失ったどうかを検証するにはまだ時間が必要だ。

東京オリンピックのボランティアはどう動く

 日本人の生存権の程度を示すバロメーターは、ボランティアがどう動くかである。菅首相およびオリンピック関連の責任者たちには、ボランティアの健康を守ることは眼中にないようだ。「ただで動いてくれるお人好し」程度にしか認識しておらず、馬鹿にしている。「歴史的なオリンピックに関わりたい」という気持ちは理解する。しかし、国民の大半が開催に反対しているオリンピックに自身の関心の赴くままボランティアをするのを再考してみてはどうか。ボランティアのうち、半分くらいがボイコットすることを期待している。そうなれば日本の前途も多少は明るいと感じる。

総選挙の結果次第

 菅にしろ安倍にしろ、自民党政権は選挙での大勝を受け、国民を舐めきっている。国民を守るという政権としての最低の使命を完全に放棄した。「国民は従順な者」と錯覚して、統治において自身の欲求を先行させている。そこに新型コロナウイルスが襲来した。この2人はコロナ対策において完全に無能ぶりをさらけ出した。緊急事態宣言を4回発出したが、何ら教訓を得ることもできていない。かつての帝国陸軍が突撃を繰り返したことを再現するかのような体たらくであり、菅、安倍ともにそのようなリーダーであることを国民は思い知った。

 国民は非抵抗者で、権力になんでも従うという認識をしている典型な思考者が西村経済再生担当大臣である。酒を提供する飲食店に対して、酒問屋、金融機関を通じて圧力をかけた。飲食店の温厚な経営者たちが強く抗議の意思を表明し始めた。彼らに伝えたい。

「自分を守るものは自分しかいない」。生存権を守るのは至極、まともな権利だ。

 近々、行われる総選挙で国民が自民党政権に打撃を与えられる選挙結果を選んだのであればまだ多少、救いがあろう。しかし、残念だが日本の老化、劣化という大勢には変化はない。

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