山口FGの舞台裏~後手に回った取締役解任劇 (前)
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【文書1】の通り、山口フィナンシャルグループ(FG)は20年10月14日、地域の中小企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するために、日本マイクロソフトと包括連携協定を締結した。
協定締結後に記者会見に応じたのは山口FG代表取締役会長兼CEO・吉村猛氏と日本マイクロソフト執行役員(コーポレートソリューション事業本部長)・三上智子氏。あでやかな三上執行役員の姿は、吉村会長の目をひいたようだ。【表1】を見ていただきたい。山口FGの役員推移表である。
<2020年6月25日の株主総会>
◆山口FGの取締役は10名。社内4名と社外6名。吉村氏は代表取締役会長グループCEOに就任。吉村氏の後任として椋梨敬介氏が代表取締役社長グループCOOに抜擢され、久野耕一郎氏が取締役副社長ユニットCOOに選出された。しかし、梅本副社長と傘下3行の頭取の4名が退任したため、社内取締役は4名となり過半数を割った。
・社外取締役は田村浩章氏(宇部興産相談役)が退任。永沢裕美子氏(フォスター・フォーラム世話人/東大教育学部卒)、柳川範之氏(東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授)、末松弥奈子氏(ジャパンタイムズ代表取締役会長兼社長)の3人が新たに選任された。吉村氏の母校は東大であり東大関係者を重用しているのが目に付く。加えてお眼鏡にかなう女性も選任しており、社外取締役は4名から6名と過半数を超えた。<2021年6月25日の株主総会>
◆社内取締役は久野副社長が任期途中の1年で退任し、吉村氏が兼務していた山口銀行代表取締役会長に就任。社内取締役は4名から3名に減少。
・社外取締役は楠正夫氏(トクヤマ相談役)が退任。山本謙氏(宇部興産会長)と三上智子氏(日本マイクロソフト執行役員)の2名が選任された。楠氏と山本氏は山口県内の有力企業の出身者であり、交互に社外取締役に就任している。
・特筆すべきは吉村氏の専横的な人選が目立つことだ。社内取締役・久野氏を任期途中で退任させ、三上氏を社外取締役に選任したため、社内取締役3名、社外取締役7名となった。<2021年6月25日の株主総会後の臨時取締役会議>
◆筆者は21年7月30日、Net IB Newsに「山口FGの吉村猛会長の再任を否決~その真意を検証する(2)」を掲載している。以下は内容を抜粋したものである。◆議長席に座った吉村会長が1号議案として、吉村代表取締役会長兼CEOの選定、ならびに椋梨代表取締役社長の選定を諮ります」と発言すると、1人の社外取締役が手を挙げて吉村氏と椋梨氏選定の採決を分けるように提案。
◆これを受け、吉村氏はまず自らの選定について「賛成の方は挙手をお願いします」と呼びかけた。オンラインも含めて出席した取締役10人のうち挙手が確認できたのは吉村氏だけだったという。
・社外取締役7名のうち新任は山本謙氏と三上智子氏の2名。留任取締役は5名。そのうち1人の社外取締役が挙手して吉村氏のCEOの留任に待ったをかける発言をしたのは、顔ぶれから見ると、佃和夫氏と推測される。
・佃氏が山口FGの取締役(監査等委員)に就任したのは15年6月。吉村氏が山口FG代表取締役社長兼山口銀行頭取に就任したのは1年後の16年6月。佃氏を取締役に指名したのは吉村氏の前任の故福田浩一社長。
・社内取締役の福田進取締役監査等委員(常勤)は16年6月に就任しており、佃氏と福田氏の2名だけが吉村氏の指名を受けていない取締役である。<まとめ>
吉村氏に“見染められた”かたちで山口FGの社外取締役に就任した三上智子氏。しかし、『実録 頭取交替』に次ぐクーデターに直面、吉村CEOが自らの選任に対して「賛成の方は挙手をお願いします」と呼びかけたが、三上氏は挙手したくてもできなかった。胸が張り裂けるような心境だったことだろう。【文書1】山口FG「日本マイクロソフト(株)との地域DX推進にかかる包括連携協定締結について」
以下は掲載を省略。
(つづく)
【(株)データ・マックス顧問 浜崎裕治】
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