2024年12月23日( 月 )

相次ぐホワイトハウス暴露本:今回の標的はトランプ夫人

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 NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」の記事を紹介する。今回は、2021年11月5日付の記事を紹介する。

 先の衆議院議員選挙の結果、自民党が単独過半数を得たこともあり、岸田文雄新総理は意気揚々と11月1日から英国のグラスゴーで開催されている国連の気候変動問題を議論するCOP26へ馳せ参じました。とはいえ、現地での滞在時間は8時間足らずという「とんぼ返り」で、各国の首脳や2万5,000人もの参加者の声をじっくりと聞く時間はなかったようです。直前にローマで開催されたG20には、投開票日と重なっていたため欠席せざるを得ませんでした。

 COPもそうですが、G7やG20にしても、国際会議となると同伴する夫人たちの言動やファッションセンスも何かとメディアの注目を集めます。新総理夫人の裕子さんは英語が堪能でマツダの重役秘書も務め、外相時代の岸田氏に同行して海外へも出かけていたとはいうものの、COP26でのファースト・レディとしての外交デビューはありませんでした。岸田総理は年内にはワシントンを訪問し、バイデン大統領との面談を調整中とのことですから、その時が裕子夫人の出番となりそうです。

 そんな中、アメリカでは最新の「歴代ファースト・レディ人気調査」の結果が話題となっています。それによれば、第1位は断トツでジャックリーン・ケネディでしたが、現在のジル・バイデン夫人は上から4番目で、まずまずの好感度を得ているようです。一方、トランプ前大統領のメラニア夫人はビリから2番目という不人気でした。

 悲劇の主人公ケネディ大統領と比べれば、大ぼら吹きのトランプ大統領への風あたりの強さが、夫人の人気度にも影響しているのかも知れません。トランプ氏の娘イバンカがメラニア夫人に付けたあだ名は「ポートレート」です。要は、「飾り物」という意味でしょう。

 こうした裏話を満載した新ホワイトハウス イメージ著が10月5日、アメリカで出版されました。本の題名は『I’ll Take Your Questions Now』(今なら質問に答えます)です。筆者はステファニー・グリシャムさん。彼女は5年間にわたり、トランプ前大統領とメラニア夫人にホワイトハウスで仕えており、トランプ前大統領一家の身内ともいえるような存在でした。

 広報責任者としてホワイトハウス内に限らず、国内外での公式ツアーにも同行し、大統領夫妻の知られざる実態を観察してきたわけです。トランプ前大統領は2024年の大統領選挙に再出馬し、ホワイトハウスの奪還を目指す意向を内々ですが明らかにしているため、この本もいずれは日本で翻訳出版されるでしょう。

 それまで待てないという人のために、さわりの部分を紹介しておきます。場合によっては再びファースト・レディとしてカムバックする可能性もあるわけで、彼女の実態を知ることはアメリカ政治の裏舞台を知ることにもなります。

 その1、メラニア夫人にシークレット・サービスが付けたあだ名は「ラプンツェル」でした。『グリム童話』に出てくる王子を騙す妖精に因んだもの。理由は、彼女の最大の関心事が「美容とリラクゼーション」にあったからです。

 新型コロナウイルスが拡大し、外出の自粛が要請される前から、彼女はホワイトハウス内の自室にこもり、スパとフェイシャルに励み、スタッフとの打ち合わせは必要最小限でした。そのため、シークレット・サービスの警備官は大喜びだったといいます。なぜなら、ファースト・レディは部屋に籠っていることが多いため、外出先での警備の必要が少なく、自分たちは家に帰って寛ぐことができたからです。確かに、選挙期間中も大統領夫人になってからも、メラニア夫人は夫と行動をともにする機会が最も少ないファースト・レディでした。

 というのも、彼女にとって最も大切な存在は息子バロン君であり、母国スロベニアから呼び寄せてホワイトハウスで同居していた両親だったからです。彼らは皆、スロベニア語で会話していました。トランプ氏はなかなか会話の輪には入れなかったようです。

 その2、メラニア夫人はトランプ大統領と同じで、自分に関するメディアの扱いには極めて神経質で、報道された自分に関する記事を念入りに読んでいたそうです。彼女に批判的な報道に接すると、捏造でも構わないので、記事の修正を求めるような指示がスタッフに相次いだと言います。

 とくに注目を集めたのは、英国のタブロイド紙が彼女に関する記事のなかで、「結婚前にはモデルの仕事の傍らコールガールもしていた」と書いたことに対して、1億5,000万ドルの名誉棄損の訴訟を起こしたことです。そして見事に勝利を収め、290万ドルを手にしました。

 その3、トランプ大統領の浮気には心底腹を立てていたようです。なかでもポルノ界のスーパースターと異名を取るストーミー・ダニエルズさんとの逢瀬が発覚すると、「夫とは別行動をする」と宣言し、大統領専用機「エアフォース・ワン」に向かう際にも、別の車両を手配させました。

 当然、大統領の手を握ることも拒否したわけです。曰く「私はヒラリー・クリントンとは違うわ!」。その意味するところは、ビル・クリントン大統領がホワイトハウス内でインターンの女性モニカ・ルインスキーと不倫関係になっていたことが発覚した際、ヒラリーは何事もなかったように、夫と手を携えてエアフォース・ワンに乗り込んだことがあったからです。メラニア夫人に言わせれば、「あんな仮面夫婦と一緒にしないでほしい」という意思表示に他なりません。

 アメリカの大統領夫妻といっても、所詮は男と女です。心底理解し合っているのか、それとも互いの利益のためにポーズを取り合っているのか、興味は尽きません。その他、この本には「まさか!」と言わざるを得ないようなトランプ夫妻の実像が余すところなく暴露されています。もちろん、メラニア夫人の事務所は「すべてがフェイクニュースで、金儲けのための捏造本に過ぎない」と全面否定。

 しかし、「さもありなん」と思わせる箇所が多く、アメリカ政治の裏側を覗くにはもってこいの1冊といえるでしょう。

 次号「第271回」もどうぞお楽しみに!


著者:浜田和幸
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