2024年12月27日( 金 )

注目が集まるトリアスの行方 運営を担う北山興産とは?(後)

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 (株)北山興産は1月14日、「トリアス」の不動産信託受益権を取得したと発表した。同時に、グループ会社のプラザホテル(株)が(有)トリアスマネジメントの全株式を取得した。一方で、近年では北九州・博多・小郡と大型商業施設の開業(予定)が続いている。これまでトリアスは糟屋郡の「地元の顔」として、コストコを中心に圧倒的な集客を誇ってきた。トリアスの軌跡をたどりながら、注目を集める北山興産について見ていく。

全盛期時の売却、プラザホテル

 同社は「超長期保有が基本」としながらも、2019年7月にプラザホテル(福岡市中央区)を(株)いちご不動産に売却した。コロナ禍前であり、インバウンド需要の絶頂期ともいえる時期に人気ホテルを売却したことは世間の注目を集めた。「同ホテルを売却する前年は過去最高益を更新していた」としている。

プラザホテル天神
プラザホテル天神

    では、なぜ同社は業績が好調だったホテルの売却に踏み切ったのだろうか。それは、設備への追加投資と、今後の市場ニーズの変化を見越したマーケティング調査によるところが大きい。同社は売却について1~1年半ぐらい前から検討していたとし、徹底的な市場調査を行っていた。「これでもか」といわれるほど、福岡市でホテル開発が進められていたのは、高まり続けると予見されていたインバウンド需要も要因の1つだった。一方で、需要増は競争率の上昇にもつながる。福岡都市圏の中心地にある大名のビジネスホテルだったプラザホテルは、今後増加するとみられた外国人訪日客がファミリー層であることや、熱を帯び続けるホテルの開発ラッシュを踏まえ、同業者に負けないホテルへイノベーションするための費用やメンテナンス費用の発生、今後の競争市場の推移を考えれば、売却すべきとの意見が多かったという。

 同ホテルの売却は時期も良く、多大な利益を同社にもたらした。その一方で、多額のキャッシュを保有することになり、優良物件を手放した同社は代替物件を探すこととなった。同社は「周辺の地価が上がり、資産価値が大きく膨らんだことを受け、巨額の資金を現金でもっていることはリスクになると考えた。売却とともに代替物件を探すというのは、大命題であった」としている。

運営の両輪としての買収

 同社はプラザホテル売却で得た資金を基に、代替物件を全国で探していた。また、ホテル、マンション、商業施設など特定の施設に限らず調査を行っている。そのようななか、手始めに買収したのが東京都港区三田にあるマンション「THE CONOE三田綱町」。同物件はRC構造、9階建ての賃貸マンション(総戸数45戸)で、1室の賃料が80万円以上の高級マンションだ。取得した理由については「調査をしていくなかで、とくに目に入った物件で、収益性・安定性のどちらもとくに問題が見当たらなかった」としており、同物件の取得は現金一括で行われた。

 そして、さらなる投資先として候補に挙がったのが、トリアスである。前述のようにトリアスは、これまで経営・管理者が移り変わってきた。代替物件の調査を全国に広げ、東京都の物件を買収した同社が次に選んだのは、地元福岡の大型商業施設だった。同社によれば、地域貢献への考えがベースになっているという。同社は「郊外の商業施設を外資系のファンドが運営するのではなく、地元の企業が地元の特性と経験を生かしたほうがもっと良くなる」と説明している。また、コストコによる売上独占のイメージがあるが、実際はそうではなく、今後も業績拡大に期待がもてるとしている。

 同社によれば、取得に向けた話が舞い込んだのは20年の秋ごろで、本格的に検討に入ったのは21年春。トリアスの広大な土地は、多数の地元地権者がそれぞれ保有している。現在、同物件を運営しているケーファが、多数存在する地主やテナントとの関係を良好なものにしていることから、同社の意見を尊重しながら運営していく方針という。

トリアスがカギとなる注目の運営スキル

 今年4月25日に「三井ショッピングパーク ららぽーと福岡」(福岡市博多区(旧・青果市場跡地))、同28日に「ジ・アウトレット北九州」(北九州市八幡東区(旧・スペースワールド跡地))の大型商業施設が開業する。両施設のターゲット層はトリアスと明確に違うとされるが、集客における影響は少なからずあるだろう。

トリアス
トリアス

    また、トリアスの代名詞であるコストコはすでに開業している北九州に続き、福岡県小郡市への出店計画も発表された。早ければ24年春に開業予定としており、トリアスの集客を牽引するコストコの新店舗開店は、トリアスの運営にも影響をおよぼすことになる。

 同社は創業者が残した豊富な資産・資金を基に、業績を拡大してきた。ウエストコートのみならず、那珂川・清滝やプラザホテルなどの運営にも英樹氏をはじめ全社で積極的にマネジメントを行い、実績を残してきた。開業から20年以上の月日が過ぎ、地元の顏ともいえるトリアス。同施設をいかに運営し、変えていくのか。同社の手腕に注目が集まっている。

(了)

【麓 由哉】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:北山 英樹
所在地:福岡市中央区大名1-12-5
登記上:福岡市西区内浜1-7-1
設 立:1972年6月
資本金:1,000万円
売上高:(21/9)15億2,433万円

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