「つくる」から「まもる」へシフト 建設業界に必要不可欠な存在へ（後）

（株）エムビーエス
代表取締役社長　山本 貴士 氏

「常に逆の方へ」 成長を後押しした考え方とは？

　──創業から順調に事業を進めてこられた秘訣をお聞かせください。

　山本　「逆のことをする」ということを徹底してきました。たとえば「煩雑な作業を率先して取り組む」とか、「世の中で莫大な力をもっているものにも対抗していく」などです。リーマン・ショック後も、業界がどんどんダンピングを図っていくなかで、私は利益率を上げていくよう旗振りをしてきました。利益率を下げれば、もっと楽に仕事は取れたのですが…。そのような状況下でも、私が「周りと逆の動き」を推し進めた理由は、このようなことをすれば大失敗をしないことがわかっていたからです。しかし、この考え方で事業がうまく進められたのは、私の考え方を受け入れ、ついてきてくれるスタッフがいてくれたからこそです。

　──現場出身の経営者で上場する意志がある方は珍しいように感じます。上場に関して、どのような思いがあったのでしょうか。

　山本　最初に話した通り、創業メンバーは皆、足場・とび職人からのスタートでした。学生時代に勉強して、大学に行って…という道を進んできた方は、あまり踏み込まない業界だと思います。彼らがもし上場企業に入ろうと思っても、審査を通り抜けることは容易ではありません。そこで、「彼らが逆立ちしても上場企業には入れないのなら、彼らがいる企業が上場すればいい」と思い、その気持ち一択で上場を目指しました。その後、05年4月に福証Q-Boardへ、15年8月には東証マザーズへの上場をはたしたのですが、上場前の従業員からすると、「ほんとにやったな」って感じだったでしょうね（笑）。もともと、従業員に上場の意志は伝えていました。有言実行することによって、社員たちのなかで私に対する信頼が生まれたのではないかなと考えています。

　──山本代表のモチベーションをお聞かせください。

    山本　起業する際の私の第一の目標は1億円を稼ぐことで、そこが最初のモチベーションにつながっていたと思います。その目標を達成してからは、社員をびっくりさせたい、というところが私のモチベーションにつながっています。それが毎月の給料に反映されるのか、翌期の年収になるのかなど、細かいことはまだ決まってはいませんが、一緒に働いていくなかで「山本貴士についてきてよかった！」と思ってもらえるようなことをしていきたいですね。現在、私が社長でいる間は“いい会社”というよりも“強い会社”をつくることに重きを置いています。もしも経営がうまくいかなくなった時でも、倒産やリストラなど社員を裏切るような行為はしたくありませんので、そのために財務基盤を構築している最中です。

　──最後に、貴社の将来展望についてお聞かせください。

　山本　これから建物やインフラなどは、つくり替えるのではなく、持続力を上げるためにどうするかが重点的に考えられるようになってくると思います。そうなれば、私たちの技術が必要になってくるでしょう。そこで、まずは営業基盤、技術力、組織力の向上を図っていこうと考えています。財務面では、売上高経常利益率10％以上、自己資本比率50％以上、有利子負債0を継続させます。また現在、全国に22拠点の支店を構えているのですが、24年6月には全国47都道府県すべてをカバーするために50拠点を展開、その後は海外への事業拡大を目指していきます。最後に、当社と関わるすべての人に「エムビーエスでよかった」と思ってもらえるよう、これからも成長し続けていきます。

（了）

【文・構成：立野　夏海】

＜COMPANY INFORMATION＞
代　表：山本　貴士
所在地：山口県宇部市西岐波1173-162
設　立：1997年6月
資本金：3億9,132万円
売上高：（22/5）40億3,013万円
ＵＲＬ：https://www.homemakeup.co.jp/

＜プロフィール＞
山本　貴士（やまもと・たかし）
1972年生まれ、山口県出身。18歳で横浜の外国車ディーラーに就職。1年半の勤務後、山口県に戻り、93年1月に足場業を目的に個人創業。97年6月有限会社として法人化。2001年7月に（株）エムビーエスへ組織変更し、現在に至る。

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