2020年、発送電分離。電力市場自由化は最終段階へ
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大手電力会社に対し、送電部門の分社化を義務付ける改正電気事業法が17日、参議院本会議で成立した。送電部門が電力会社から切り離されることによって、新電力(PPS)など新規電力事業参入者が送電網を利用しやすくすることが狙いだ。
福島第一原発事故以来、電力の不足が問題視されてきた。その不安を払しょくするため、国は電力の制度改革に乗り出し、第1弾として今年4月には広域の電力融通をスムーズにする「電力広域的運営推進機関」を設置した。来年4月からは第2弾として、低圧部門まで含めたすべての電力の自由競争が可能となる。今回、参院で成立した第3弾の発送電分離は、電力改革の最終段階ともいうべきもの。これにより、電力市場での公平な競争ができると期待されている。
電力市場での競争が軌道に乗ったら、最終的には現在ある家庭用の電気料金の規制も撤廃し、完全に自由な電力市場をつくる考えもある。問題は、消費者にとって、完全な電力の自由化が必ずしも家計負担を軽くするわけではない、という点だ。競争が行われれば安くなる、というのは1つの可能性に過ぎず、あるいは競争によって電気料金が高くなる可能性もあるのである。たとえばガソリン価格は完全に市場で決められているが、必ずしも常に家計に優しいわけではない。同様に、電力も自由化されれば料金が安くなるとは安易に言えないのである。
ただし、サービスは多様化する可能性がすでに見え始めている。たとえばソフトバンクは太陽光発電による電力事業も手がけており、インターネットや携帯電話と電気料金の支払いをパッケージしたサービスを提供すると発表している。このように、電気は電気、通信は通信といったような垣根を取り払って、支払の手間やトータルでの料金引き下げなどの新たなサービスが生まれ、単に価格だけではない競争は生まれるだろう。
電力の自由化は、単に電力だけの話ではなくなってきているのである。どのようなサービスを、どこの会社が、どのように提供するのか。消費者には総合的な判断力が必要になるだろう。来年4月からの電力小売り自由化、20年の発送電分離は、電力サービスの新しい形を生み出す基礎となることは間違いない。
【柳 茂嘉】
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