2024年12月23日( 月 )

建設アスベスト控訴審始まる~1人親方、建材メーカーの責任どう審理

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 建設現場で使用された建材に含まれていたアスベスト(石綿)粉じんを吸い込み中皮腫などの病気にかかった元建設労働者とその遺族ら51人が国と建材メーカー42社を相手取って、健康被害への損害賠償を求めた九州建設アスベスト訴訟の控訴審の第1回口頭弁論が7月13日、福岡高裁(白石哲裁判長)で開かれた。

九州建設アスベスト訴訟控訴審に臨む原告・支援者ら=7月13日、福岡高裁前<

九州建設アスベスト訴訟控訴審に臨む原告・支援者ら
=7月13日、福岡高裁前

 1審の福岡地裁判決は、国が防じんマスク着用を義務付けるなどの規制権限を行使すべきであったのに怠った国の違法を認め、国家賠償を命じたが、建材メーカーの共同不法行為を認めなかった。また、1人親方を「労働者ではない」として、賠償の対象外とした。一審原告、国双方が控訴していた。原告は、福岡、長崎、大分、熊本の4県に在住する元労働者と遺族。被災者は、内装や大工、配管工などとして建設現場で長年働き、労災かアスベスト新法による認定を受けている。
 控訴審で、原告側は、一人親方への国の責任、建材メーカーの責任が認められるべきだと主張。国、建材メーカーは控訴棄却を求めた。

 元建設労働者らは、建材に含まれていたアスベスト粉じんを吸い込み病気になったことは明らかだが、多くの建設現場で働いており、どのメーカーのどの建材に含まれていたアスベストをどれだけ吸い込んだか、原因を特定するのは困難だ。
 「個別の建材による因果関係を立証するのが不可能であり、その立証を被害者に強いるのは正義・公正に反する」。原告弁護団の梶原恒夫弁護士は指摘する。「共同不法行為を適切に適用して、立証できない因果関係をつなげていくべきだ」
 共同不法行為とは、何人かの共同の不法行為によって他人に損害を与えたときは、だれが実際に損害を与えたかわからなくても、各人が連帯して全額損害賠償責任を負うとする考え方だ(民法719条1項)。
 たとえば、何人かが石を同時に投げて、誰の石が当たってけがをさせたかわからないが、共同不法行為と認めて、石を投げた全員に損害賠償責任を認めるというものだ。このとき、誰の投げた石か特定しなければ加害者の法的責任を認められないとすれば、公平に反する。

 一審判決は、「被告企業以外の者によって各被災者の損害がもたらされたものではないことの証明がない」などとして、共同不法行為を認めなかった。
 原告側は、一審判決を「形式的な判断によって、共同不法行為の成立を否定した」と批判すると同時に、控訴審で、「病因建材」という新たな考え方を打ちだし、建材メーカーの共同不法行為を認めることが可能と主張している。
 原告側は、建材メーカーごとの建材の流通状況やシェアなどを明らかにさせることによって、被災者の働いた地域や職種と突き合わせ、各人が病気になった原因である建材(「病因建材」)を特定する方針だ。「共同不法行為を的確に適用することで、企業責任を明確にし、断罪させたい」と訴えている。
 白石裁判長は、原告側が被告企業に建材の製造販売量、流通地域、シェアなどを求めたのに対し、被告企業に「検討して答えてほしい」と述べ、「病因建材」という論点に関心を示した。

 この訴訟の特徴は、規制権限を行使しなかった国の責任とともに、アスベストが危険だと認識しながら企業の利益のためにアスベスト含有建材を流通し続けた建材メーカーの法的責任を問うことにある。原告側は、被害救済のための基金創設を目指しており、国とメーカーに拠出させ、基金制度を実現するには、司法判断が必要だと訴えている。なお、訴訟では、ゼネコンや建設会社の法的責任は問うていない。

【山本 弘之】

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