2024年11月23日( 土 )

救世主になるのか~ウクライナ戦争の陰で進む昆虫食と人工肉(後)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

国際未来科学研究所
代表 浜田 和幸

給食に昆虫食を試験導入

 実は、地球は「虫の惑星」でもあります。極地を除けば、地球上にあまねく存在しているからです。日本だけでも10万種類を超える昆虫が確認されています。あのビル・ゲイツやジェフ・ベゾス、そしてハリウッドスターのレオナルド・ディカプリオらも代替肉や昆虫食に関心を寄せ、投資に熱心と言われているほどです。

 たとえば、オランダでは小学校の給食に昆虫を試験的に導入し始めたとのこと。地元の政府と大学がプランを立ち上げ、農家や園芸集団とも協力し、昆虫食の普及キャンペーンを始めたと報じられています。最近、欧米諸国では「昆虫寿司」が話題となっていますが、今回のオランダの試みは100校以上の小学校を対象としており、幼いころから昆虫食に慣れさせようという政策的な目論見があるようです。

 とはいえ、地球環境の未来を思う気持ちは分からないでもありませんが、いくら「コオロギやイナゴなどは栄養分も豊富だ」と言われても、皆さんはどうでしょうか。実際、オランダの子どもたちの反応はいま1つのようです。「おいしい。もっと食べたい」と答えた小学生は少数派とのこと。

 しかも、線虫類やハリガネムシなどには寄生虫が宿っている可能性も高いため、病原体の検査体制も今後の大きな課題となりそうです。さまざまな課題はあるでしょうが、オランダ政府は国内の農家にも働きかけを強めており、今後は農作物から食用昆虫の育成にシフトさせようとしていることは間違いありません。

 しかし、最近、その昆虫類にも絶滅の恐れが出てきたとの指摘が相次いでいます。というのも、熱帯雨林が毎日8万エーカーも消滅中のため、そこに生存してきた昆虫類の75%から90%が絶滅の危機に瀕しているというのです。

将来のビッグビジネスに?

代替肉(プラントベースミート) イメージ    「人類の生き残りにとって切り札になる」と期待の高まってきた「昆虫食」ですが、決して楽観できそうにありません。なぜなら、気象学の専門家によれば、毎日200種類の植物、鳥、動物、魚、両生類、昆虫、爬虫類が絶滅中であり、すでに2万6,000種類は絶滅の危機に瀕している模様ですから。

 ウクライナでの戦争が米ロの核兵器の応酬になりかねない事態も憂慮されますが、地球全体が人も魚も動物も住めない環境に陥っていることも大いに気になります。それだけ生物圏(地表、水、大気)が汚染され、破壊されてしまえば、人類だけが生き残れることはあり得ない話です。

 そこで、登場してきたのが、救世主を自任するビル・ゲイツです。コロナ用のワクチンでも大儲けしていますが、食糧危機にかこつけて「代替肉(プラントベースミート)」の普及に本腰を入れています。「ゲイツに続け」とばかり、今や世界では70を超える企業が人工肉の生産に着手しているのです。

 要は、肉も魚も野菜もすべて人工的につくるという壮大な「人類救済計画」が緒に就いたわけです。はたして、どのような結末となるのでしょうか?人工肉の人体への影響はいまだ「未知の世界」です。今なら、春夏秋冬、自然の恵みを思う存分に楽しめます。とはいえ、そうできるのは「あと4年しか時間的猶予がない」のかも知れません。人間と自然の共存共栄に舵を切る最後のチャンスを生かせるかどうかで、我々の未来は決まるはずです。

 ビル・ゲイツ流の「人工食」に望みを託すのか、それとも、人間が自然の一部であることにもっと思いをめぐらせ、今こそ日本的な「もったいない」の省エネ・ライフスタイルと「助け合い」の精神を発揮するのか。健康長寿の食文化と自然との共生を世界標準とすることで、人類の滅亡を食い止める先頭に日本が名乗りを上げる好機到来とすべきだと思います。

 将来のビッグビジネスになるとの観測もあり、しのぎを削る動きが出てきました。「負けてはならない」と日本の農水省でも「昆虫ビジネス研究開発ワーキンググループ」を発足させ、現在、食用コオロギの養殖に関しては26社が参入中です。生命力の強いゴキブリなども滋養強壮にはプラスなのかもしれません。

(了)

浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
 国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。近著に『イーロン・マスク 次の標的「IoBビジネス」とは何か』、『世界のトップを操る"ディープレディ"たち!』。

(中)

関連記事