日本の近未来は暗いか、明るいか?今こそ現実を見て未来へ(後)
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国際未来科学研究所代表 浜田 和幸 氏
アメリカでは未来研究が学問として定着している。ハワイ大学を筆頭に未来研究施設が歴史を重ねており、世界未来学会も活発に啓蒙活動を展開中である。国防総省やCIAなどでも専門家が集められ、「世界のトレンド分析:2030年への選択肢」と銘打った報告書もまとめられているほどだ。
未来のエネルギー開発で日本は独自戦略を
「アメリカ第一主義」を標榜しつつ軍事産業第一主義にもいまだひた走るアメリカとの同盟関係に、これからも日本は固執するのか。あるいは、そのアメリカを追い抜き、「一帯一路」計画という巨大な経済圏を生み出そうとする中国と連携するのか。日本の未来をどこに委ねるのか。
大事なことは、そんな他力本願の選択ではなく、両者の強みや弱みを冷静に把握したうえで、地球規模での資源と人材の開発戦略を独自に打ち出すことであろう。「燃える氷」と呼ばれ、燃やしてもCO2の排出量が極端に少ないクリーンエネルギーであるメタンハイドレート1つをとっても、開発技術に関しては日本が世界の先頭を走っている。
ところが、既存のエネルギー源に固執する業界の抵抗もあり、その実用化のメドは立たない。実にもったいない話だ。アメリカも中国も、そしてロシアや韓国も熱い関心を寄せている「未来のエネルギー」なのである。領土問題や利権争いを乗り越え、国際的な共同開発への道筋を日本が示せる、またとないチャンスのはず。頻発する自然災害の嵐やテロ攻撃に原発が飲み込まれる前に、新たな自然エネルギーへの移行を図るべきではなかろうか。
野生動物と人類は滅亡しかけている
日本ではウクライナ戦争の行方や台湾有事の可能性が懸念材料となっている。しかし、世界を俯瞰すれば、それどころではないことがわかるはず。
世界自然保護基金(WWF)が昨年10月13日に発表した『生きている地球報告2022』は衝撃的だった。地球規模で鳥類、ほ乳類、爬虫類、魚類、5,230種約3万2,000個体群を調査した結果、この50年で世界の野生動物が69%も減少してしまったというからだ。
実は、他にも驚くべき調査や研究が次々と明らかにされているが、日本ではまったく報道されていない。たとえば、世界の1万人以上の気候専門家と科学研究機関の97%が、「このまま環境破壊が続けば、2026年には人類は絶滅の危機に瀕する」と警鐘を鳴らしている。何と、「残された時間はあと3、4年しかない」というわけだ。要は、絶滅の危機に瀕しているのは野生動物だけではないということだ。
ところが、日本では国会でもメディアでも、旧統一教会問題やウクライナ戦争に関しては、にぎにぎしい議論を繰り広げるものの、こうした環境問題はまったく無視されている。今必要なことは、目前の物価高やミサイル危機の陰で確実に進行している環境破壊によってもたらされる人類の危機という「大津波」への備えではないだろうか。
壊れつつある地球 生き方を変える
産業革命以前と比べて地球上の気温は1.2度上昇した。我が国でも「四季」の移り変わりが感じられにくくなり、極端に寒い冬と極端に暑い夏という「二季」になってしまったと感じる人が多いはず。
また、北極海海底での異変も深刻化を増す一方である。なぜなら、海底からメタンガスの噴出が続いており、その分量が多いため海中で溶けず、大気中へ放出されているからである。その結果、北米やロシアの森林地帯や泥炭地で大規模な火災が発生している。
それ以外にも、身近な人間の経済活動や世界各地で相次ぐ軍事行動がもたらす二酸化炭素とメタンガスの排出も問題を複雑化させるばかりだ。先進国では森林を切り崩し、スマートシティという名のコンクリートで固めた建造物をつくり、途上国では排気ガスをまき散らす自動車や飛行機が大手を振っている。
さらには、クリーンエネルギー源といわれるものの、ひとたび事故が起これば、原子力発電も放射能汚染の発生源となる可能性がある。福島原発事故によって発生した汚染水用のタンクはほぼ満杯状態になりつつあり、結局、希釈しての海洋放出ということになるため、漁業者や周辺国からは懸念や危惧の声が大きくなる一方である。
毎日200種類の生物が地球から姿を消している。WWFが警告を発するように、生物圏(水、地表、大気)の崩壊が間近に迫っていることは否定しようのない現実である。当然のことながら、人間だけが地球で生き残れる保証はあり得ず、日本が例外となることもあり得ない。そんな暗い未来を払しょくするには、今すぐ1人ひとりが生き方を変える覚悟を決め、実行に移すしかない。
(了)
<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。近著に『イーロン・マスク 次の標的「IoBビジネス」とは何か』『世界のトップを操る“ディープレディ”たち!』。関連キーワード
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