2024年07月16日( 火 )

人類と世界の未来を左右する欧米投資ファンドのパワー(1)

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国際政治経済学者 浜田 和幸 氏

 NPO法人日本バイオベンチャー推進協会(JBDA; 理事長 松島綱治氏)が主催する第42回JBDAバイオベンチャーフォーラムが5月9日、東京大学(東京都文京区)で開催された。国際政治経済学者の浜田和幸氏が、「人類と世界の未来を左右する欧米投資ファンドのパワー」をテーマに同フォーラムで講演した。浜田氏の講演内容を紹介する。

世界最大の金融投資ファンド「ブラックロック」

国際政治経済学者 浜田 和幸 氏
国際政治経済学者 浜田 和幸 氏

    ウクライナ戦争が続くなか、戦争の終結が見えず、犠牲者の数は増える一方です。この戦争は実質的にロシアと米国の代理戦争になっており、停戦交渉は進みません。戦争の長期化や国際関係の緊張を意図する集団の1つとして、世界で大きな影響力をもっているのが、世界最大の米国ファンド「ブラックロック」です。

 米国は、将来有望な海外マーケットや人材を獲得しようとアンテナを張り、大きな利益を生みそうな人材や国、企業を投資の対象にしています。なかでも、世界最大の金融投資会社であるブラックロックは、日本、中国、ロシアなどの世界の新興企業に食い込んでいます。

 大学も生き残りが厳しい時代です。元ブラックロック・ジャパン(株)取締役CIO(Chief  Investment Officer)の福島毅氏が、4月1日付で東京大学の資金運用責任者としてCIOに就任しました。大学が生き残っていくためには投資に力を入れることが欠かせません。その第1号に選ばれたのが、元ブラックロック・ジャパン取締役です。ブラックロックと東大が提携するようになった背景には、ブラックロックの世界的な影響力があります。

米国で地方の中小銀行が次々と破綻

 米国が注目している感染症やエネルギーの問題は、大きなビジネスにもなります。そのため、米国はこれらのビジネスを推進しています。しかし、新興企業に投資して企業を育ててきた中小銀行が、倒産や破綻に次々と追い込まれています。

 米国には約4,800行の銀行がありますが、2,300行以上が債務超過です。銀行は、投資はしていますが、手持ち資金がありません。スタンフォード大学やコロンビア大学が行った米国金融機関の財政事情調査によると、債務超過となっている銀行のうち186行はいつ倒産してもおかしくない厳しい状況だと言われています。

 バイデン大統領は、米国の金融体制は万全であり、次々と銀行が破綻に追い込まれる恐れはないため、心配しなくてよいと発言しています。しかし米国では、中小銀行の倒産によって、残った銀行の寡占状態となっています。大きな投資ファンドが、業績が悪化した地方の中小銀行を吸収する流れになっており、その最前線に立っているのがブラックロックです。ブラックロックが投資している事業の規模は、日本やドイツの国内総生産(GDP)の2倍を超えています。

 バイデン大統領は、2024年の大統領選挙で再選を目指すことを発表しました。米国では高齢化が進むなか、高齢者のことをよく分かっているのは81歳の自分であり、やり直した仕事が多くあるため、大統領をあと4年務めさせてほしいと発言しています。

 このようなイメージ戦略は、本来なら人前でのスピーチで語られます。しかし、バイデン大統領は3分間のビデオメッセージで国民に語りかけました。このようなバイデン大統領の姿勢は力強さや迫力に欠けており、今の米国を象徴しているといえるでしょう。

(つづく)

【文・構成:石井 ゆかり】


<プロフィール>
浜田 和幸
(はまだ・かずゆき)
 1953年、鳥取県生まれ。国際政治経済学者。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。国際未来科学研究所主宰。清華大学国家戦略研究院在外研究員。新日本製鐵、米国戦略国際問題研究所、議会調査局を経て、参議院議員に当選。総務大臣政務官、外務大臣政務官、2020東京オリンピック招致委員などを歴任。アルベルト・シュバイツアー国際貢献賞受賞(オーストリア・シュバイツアー協会)。アラブ諸国友好功労賞受賞(在京アラブ外交団)。日中ブロックチェーン協会理事長。著書多数。最新作は『世界のトップを操る“ディープレディ”たち!』(ワック)。趣味の書道を通じて日中の文化芸術交流に尽力。全日中展顧問。23年5月、旭日中綬章を受賞。

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