2024年12月22日( 日 )

人類と世界の未来を左右する欧米投資ファンドのパワー(2)

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国際政治経済学者 浜田 和幸 氏

 NPO法人日本バイオベンチャー推進協会(JBDA; 理事長 松島綱治氏)が主催する第42回JBDAバイオベンチャーフォーラムが5月9日、東京大学(東京都文京区)で開催された。国際政治経済学者の浜田和幸氏が、「人類と世界の未来を左右する欧米投資ファンドのパワー」をテーマに同フォーラムで講演した。浜田氏の講演内容を紹介する。

バイデン大統領のスキャンダルとブラックロック

 バイデン大統領はスキャンダルも抱えています。バイデン大統領の長男のハンター・バイデン氏は政治的なコネクションを売り物にしてロシア、ウクライナ、中国から資金を集め、財務当局に申告していないことが問題になっています。しかし、バイデン大統領はハンター氏を全面的に信頼しており、ハンター氏の疑惑はバイデン大統領の足を引っ張るためのフェイクニュースだとしています。バイデン大統領は、バイデン家のためにも選挙に勝ちたいという主張で選挙戦に挑んでいます。

 しかし、米国有権者の約70%は、バイデン大統領は当選しても4年の任期で86歳になるため、次期大統領を務めるのは難しいと考えています。

 民主党は、バイデン大統領より若い候補者を出したいと考えていますが、若い立候補がなかなか出てきません。故ジョン・F・ケネディ大統領の甥であるロバート・ケネディ・ジュニア氏は出馬を宣言しましたが、支持率が伸びません。

 その理由として、米国のメディアは現バイデン政権と深いつながりがあることが挙げられます。そのつながりを取り持っているのが、ブラックロックです。ブラックロックは米国の大手メディアのニューヨークタイムズの最大の株主であり、米国の上場企業の多くの株を所有しています。

 コロナ禍のロックダウンで多くの企業が倒産するなか、米国政府は企業向けに救済予算を組みました。この救済予算の配分を請け負ったのが、ブラックロックです。ブラックロックは自社と関係のある企業に多くの救済予算を配分しました。そのため、それらの企業は株価が上昇し、業績も良くなっています。

 バイデン大統領はこれらの不都合な真実が表沙汰にならないように、手段を講じています。バイデン政権は元ブラックロック幹部であるアデワレ・アデエモ氏を財務副長官、ブライアン・ディーズ氏を国家経済会議(NEC)委員長に起用しました。加えて、元ブラックロック幹部のマイク・パイル氏がハリス副大統領の首席経済顧問、エリック・ヴァン・ノストランド氏が経済問題を扱う顧問に就任しました。米国政府の主要なポジションをブラックロック関係者が占めています。

ウクライナ復興ビジネス

国際政治経済学者 浜田和幸氏
国際政治経済学者 浜田和幸氏

    このように世界で大きな影響力をもつブラックロックが新ビジネスとして注目しているのが、ウクライナ復興です。日本では、ロシアが一方的に侵略したためウクライナで犠牲者が出ているという見方が一般的です。しかし、ウクライナ戦争がなぜ「第三次世界大戦」といわれるまでに大きな事態になったのかという究極の原因を見つめるべきです。ロシアがウクライナに軍事侵攻した背景として、ロシアにも問題はありますが、ウクライナ戦争を仕掛けた米国を中心とするNATO軍の思惑があります。ウクライナ戦争が長引くほどに、軍需産業などからなる軍産複合体は大儲けができます。軍需産業が新しい戦争の種を次々とまいているため、ウクライナ戦争は終わりません。

 ウクライナ戦争の次は、台湾有事だと言われています。米国はウクライナを通じてロシアの軍事的脅威をゼロにしました。しかし、米国にとってロシア以上に中国の存在が大きくなっています。米国は中国を台湾に攻め込ませて、「中国はけしからん」という国際世論を喚起し、「アジア版のNATO」を築いて中国の力を抑えようとしています。

 ウクライナへの支援に日本も協力しています。小生は福島第一原発事故が起きたとき、現地で支援活動をしてきましたが、ウクライナからの日本への協力要請を当時からひしひしと感じていました。政府は大規模な水素製造拠点である「福島水素エネルギー研究フィールド」を福島につくり、日本とウクライナの技術交流を進めようとしていますが、ウクライナ政府は日本政府と同じようには考えていません。そのため、水素エネルギーの開発拠点をウクライナにつくり、日本と組んで技術開発をしようという動きは出ていません。ウクライナ政府は戦争が続く限り、米国、欧州、日本の支援が得られるはずだという発想があるためです。

 ウクライナは海外から支援が相次ぎ、支援総額は約30~40兆円におよびます。岸田首相は新たに約7,370億円の援助を計画していますが、ウクライナのゼレンスキー大統領はしたたかで、その10倍を支援してほしいと要望しています。ゼレンスキー大統領は世界に向けて、資金をもっと援助してほしい、もっと多くの武器を売ってほしい、そしてできれば自身にノーベル平和賞を与えてほしいと主張しています。

(つづく)

【文・構成:石井 ゆかり】


<プロフィール>
浜田 和幸
(はまだ・かずゆき)
 1953年、鳥取県生まれ。国際政治経済学者。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。国際未来科学研究所主宰。清華大学国家戦略研究院在外研究員。新日本製鐵、米国戦略国際問題研究所、議会調査局を経て、参議院議員に当選。総務大臣政務官、外務大臣政務官、2020東京オリンピック招致委員などを歴任。アルベルト・シュバイツアー国際貢献賞受賞(オーストリア・シュバイツアー協会)。アラブ諸国友好功労賞受賞(在京アラブ外交団)。日中ブロックチェーン協会理事長。著書多数。最新作は『世界のトップを操る“ディープレディ”たち!』(ワック)。趣味の書道を通じて日中の文化芸術交流に尽力。全日中展顧問。23年5月、旭日中綬章を受賞。

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