「鷲のマーク」世界へ 大正製薬、創業家MBO 海外戦略を加速か
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「鷲(ワシ)のマークの大正製薬」が東証市場から退場する。
大正製薬らグループの親会社、大正製薬ホールディングス(株)(本社:東京都豊島区、上原明代表、以下、大正製薬HD)は、上原茂副社長が代表を務める大手門(株)(本社:東京都豊島区)が15日まで大正製薬HD株式に対して実施していた株式公開買い付け(TOB)が成立したことを発表した。これにより大正製薬HDは今後、手続きを経て上場廃止になる見通しだ。
TOB価格は8,620円。TOBへの応募数は6,003万4,194株。大手門はTOBで大正製薬HDの議決権で73.12%を保有することとなり、今後スクイーズアウト(強制買い取り)で全株式取得する見込み。その場合、買付総額は7,100億円程度で経営陣が参加する買収(MBO)で日本企業として過去最大になるという。
用意周到な舵切り
大手門は、大正製薬HDの副社長である茂氏が代表を務める。HDの現社長・明氏は茂氏の父親だが、明氏は婿養子として上原家に入った(先代の昭二氏も三代目社長・正吉氏の養子)。茂氏は正吉氏から跡取りとして育てられたとされ、茂氏は今後、大正製薬HDの社長に昇格するものとみられる。大手門は法人番号指定年月日が2023年8月21日で、TOBを開始したのが11月27日、今回のTOBのために新たに設立された会社であろう。
大正製薬HDは、TOBの開始前に、早期退職優遇制度の実施によって645人の応募者の全員退職を発表、組織改革の準備を進めていた。
同社の24年3月期中間決算で見る業績は次の通りだ。
<主力ブランド>
「リポビタンシリーズ」289億円(前年同期比3.5%増)
「パブロンシリーズ」130億円(同39.7%増)
「リアップシリーズ」54億円(同2.3%減)
「ビオフェルミンシリーズ」73億円(同33.0%増)<医薬事業>
2型糖尿病治療剤「ルセフィ」67億円(同1.6%増)
骨粗鬆症治療剤「ボンビバ」55億円(同46.0%増)
整腸剤「ビオフェルミン」24億円(同5.6%増)
経皮吸収型鎮痛消炎剤「ロコア」19億円(同13.2%減)24年期中間時点のグループ全体では、売上高は1,630億9,700万円(前年同期比12.9%増)、営業利益は163億6,000万円(同34.0%増)、経常利益は190億7,900万円(同10.0%増)、四半期純利益は74億5,000万円(同31.5%減)となった。純利益がマイナスになっているのは、早期退職にかかわる費用として、60億1,800万円を特別損失に計上したためだ。
主力のセルフメディケーション事業における国内売上が683億円(同8.8%増)に対して、海外売上が713億円(同15.8%増)となっている。同社は東南アジアと欧州市場に力を入れており、今回の東証市場退場も、世界戦略を加速させるための舵取りと見える。
鷲のマークが世界中を飛び回り、各国語で「ファイト一発!」の掛け声が聞こえるようになる日を期待したい。
他の製薬会社にも波及するか
製薬会社における早期退職による組織改革は、大正製薬HDにとどまらない。中外製薬、塩野義製薬、参天製薬などが昨年相次いで早期退職を実施している。
日本の市販薬は海外でも評価が高い。国内の組織を改革して、円安の波に乗り海外戦略への加速をつける様子を注視していきたい。
【寺村朋輝】
法人名
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