「生まれも育ちも中央区」 地域活動が市議会議員としての原点(後)
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全国から活力ある都市として福岡市に注目が集まっている。4期目に入った高島宗一郎市長を支えてきたのが、自民新福岡の代表で中央区選出の中島正裕福岡市議会議員である。中島氏は、プロゴルファーとして知られるが、家業を継承するために福岡へ戻り、地元警固校区の地域活動を通じて、2015年に市議会議員に当選した。天神ビッグバンで再開発が進む福岡市の未来設計や地方議員の役割などについて熱い思いを聞いた。
(聞き手:(株)データ・マックス 代表取締役会長 児玉 直)福岡IR誘致は議会側が重要
──高島市長は、国際金融都市を目指すことを公言していますが、福岡市にIR(統合型リゾート施設)を誘致する動きについてはいかがでしょうか。
中島正裕氏(以下、中島) 高島市長は、出せないでしょう。
──やりたくても出せないということですか?
中島 行政側からは、IRをという動きは出てこないと思います。大阪では大阪府や大阪市が誘致に取り組み、計画予定地も大阪万博の隣接地となっています。一方、福岡はアイランドシティも埋まりました。
──ハウステンボスにIRを整備するとした長崎IRは、昨年12月、国が計画を不認定としました。ハウステンボスは米軍基地や自衛隊の基地が隣接し、経済安全保障から考えて許可することはあり得ませんでした。福岡IRは、東区にある国営海の中道海浜公園のエリアを想定しています。
中島 福岡でも福岡青年会議所の動きがありましたが、高島市長は、誘致に名乗りを上げることは考えていなかったと思います。
──再開発で新しいビルが建つのであれば、多面的に企業誘致を行う必要があります。継続的に観光客などが来福する手立てとして、IRは常設であり、その経済効果は大きいと考えます。
中島 市民の目に見えるかたちで、IR誘致の経済効果について議会側から説明できるとは思いますが、行政側は提案しにくいだろうと思います。高島市政後に、市税収入が厳しくなった場合、IRをウォーターフロントにもってくることによって、これだけ市民も潤いますよ、セキュリティーもきちんとやりますと訴えていければ、可能性はあると思いますが、現状では受け入れにくいと思います。私は海の中道より、クルーズ船の旅客ターミナルやベイサイドなどがあるウォーターフロント地区にもってくるべきだと個人的には、思います。しかし、議会でIR決議を可決するとなると、共産党などから市税収入も上がり、市債残高は減少しつつある時期に、なぜリスクを冒して行うのかと反対する声が挙がるかと思います。
国家戦略特区の場合は、安倍政権の下で、安倍首相、麻生財務大臣(当時)と高島市長のつながりがあって、アジアのリーダー都市としての福岡市において、規制緩和を進め、再開発を進めることができました。また、人材の面で、若い人たちは、福岡にとどまらず、中央や海外へ出ていく人もいるでしょうが、外から福岡を観ることで改めて福岡の良さを感じ、将来戻って来たくなるよう発展し続けていくことが大変重要だと思います。
九大跡地利用は民間主導
──市長就任前後、高島市長の周辺にいた若い経営者も質的に変化したように思います。
中島 変わってきましたね。
──旗振りは、福岡トヨタ自動車(株)の金子直幹さんあたりでしょうか。金子さんは、福岡商工会議所の「魅力あるまちづくり委員会」の委員長を務めていらっしゃいますが、50代以下の若手経営者と会合を行いながら、よいリーダーシップを発揮しておられます。
中島 Facebookなどを拝見しても積極的に行動していらっしゃいますね。金子さんは政治にご関心があるので、時折自民党の会合にもご出席されますが、表に出て挨拶されるというより、話をじっと聞かれていらっしゃいます。
──福岡市のまちづくりは、九州大学箱崎キャンパス跡地の活用がどうなるかだと思います。複数の事業者が公募に応じています。
中島 九州大学箱崎キャンパス跡地を中心とした再開発について、今、開発を担う事業者の選定作業が進んでいますが、アリーナの建設が焦点となっています。私は、アリーナは必要ないように思います。
──七社会も、住友商事と西日本鉄道、JR九州、西部ガスを中核とするグループと九州電力、九電工、東京建物のグループに分かれています。福岡市としては調整が難しいのではないでしょうか。
中島 あくまでも、土地は九州大学とUR都市機構です。福岡市は、近接する箱崎中学校の移転建替えやJR九州が鹿児島本線の箱崎・千早間に整備する新駅などについて要望する立場にあります。福岡市は、スマートシティ実現を掲げています。自動運転バスの社会実装を目指す「FUKUOKA Smart EASTモビリティ推進コンソーシアム」は、JR箱崎駅周辺エリアで、医療施設や商業施設、公園などの生活に密着した場所に乗降スポットを設け、自動運転バス運行の実証実験を行うなどしています。
──公募に応じたトライアルグループが流通大手や食品大手など42社と連携して、AIなどのテクノロジーを活用した提案をしていますね。
中島 面白い企業が出てきたと感じています。いずれにしても福岡市としてではなく、民間主導の話です。ただ、移転建替えの方針が出された市民病院をどうするのかが課題となっています。福岡市内には、九大病院や福大病院、国立病院機構九州医療センター、民間では済生会病院などがありますが、市民病院は、市民の医療を守る公的病院としての位置づけで今後議論が出てくるかもしれません。地元の方々には病院がある安心感があるのも事実です。
市税収入増で子育てや福祉予算が充実
中島 3月で2023年度も終わりますが、福岡市は新年度予算で、子育て予算の充実を打ち出しました。新規事業として、保護者が働いていなくても子どもを保育所などに預けられる国の「こども誰でも通園制度」について、市独自の取り組みとして保育時間を国の基準の4倍の月40時間に拡大し、その費用として4億8,500万円余りを盛り込みました。
保育料の無償化も拡大し、幼稚園を利用する新年度に満3歳を迎える第2子以降の2歳児も無償化の対象に加える費用として24億1,300万円を計上しました。子育てばかりでなく福祉についても予算を広げています。やはり、市税収入が増えたからこそ、子育てや福祉にお金を配分することができます。どちらか一方ではなく車の両輪だと思います。
(了)
【近藤 将勝】
<プロフィール>
中島 正裕(なかしま まさひろ)福岡市議会議員 自民党新福岡代表
1961年生まれ。九州産業大学芸術学部卒業。86年より約11年間、プロゴルファーとしてトーナメント活動やゴルフ場運営に関わった後、帰福。2015年福岡市議会議員選挙(自民党推薦)で初当選。母校である警固小・中学校のPTA会長や、警固校区の防犯・防災委員長を務め、現在も防犯指導員や警固校区青パト隊リーダーとして地域活動に取り組む。関連キーワード
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