2024年12月22日( 日 )

経理支援ビジネスの競争激化で増加する税理士の「名義貸し」(前)

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 ここ数年で、業務禁止や業務停止といった懲戒処分を受ける税理士や税理士法人が増えている。その処分理由の多くが、税理士の資格がない者が作成した税務書類への「名義貸し」。その背景には、経理支援サービスの普及・拡大にともなう、業者間の価格・サービス競争の激化があるという。知らずに、自社の税務申告で「名義貸し」が行われていたため、税務調査の際、誤った申告が判明し、納税者に負担がおよぶ事例もある。そうしたリスクを避けるために、「名義貸し」問題の現状と納税者側が注意すべき点について紹介していく。

税務書類の作成は税理士の無償独占業務

business 国税庁によると、2014年度の税理士の懲戒処分件数は59件。3年連続で過去最多を更新した。うち税理士登録を抹消される業務禁止が13件、1年以内の業務停止が46件。処分件数は05年度18件の3倍以上と増加。福岡県、佐賀県、長崎県を所管し、約3,000人の税理士が入会する九州北部税理士会によると、その処分理由の多くは「名義貸し」という。

 ここでいう「名義貸し」とは、税理士が、実際には税務書類の作成に関わっていないにも関わらず、税理士の資格を持たないもの(無資格者)が作成した税務書類に署名をするというものだ。税理士法によって、税理士または税理士法人でない者が、税務代理、税務書類の作成、税務相談などの『税理士業務』を行うことは禁じられており、違反した場合は、2年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられる(税理士法第52条、同法第59条第1項第4号)。『税理士業務』は、税理士の「無償独占業務」とされており、有償、無償に関わらず、無資格者は行えないことになっている。

 しかしながら、無資格者による『税理士業務』は、法で禁止されているにも関わらず、税務書類の作成は、たとえば、試験合格を目指して勉強中の“税理士の卵”や企業で経理を担当した経験がある者など、ある程度の知識・経験があれば、資格の有無に関係なく行われることがある。良かれと思い、ついでに税務書類の作成を行い、知り合いの税理士に確認を頼んだところ、それが「名義貸し」となるケースも考えられる。税理士が書類を確認したうえで自己の責任において署名をしたとしても、「名義貸し」とみなされるのだ。

 だが、ここ数年で「名義貸し」が増加している背景には、記帳代行や決算書作成などの経理支援サービスを行う業者間で競争が激しくなっていることがあるという。最近、インターネット上で増加する「税理士提携で他社よりも格安!」「中小向けの格安申告」などと謳ったネット広告。このなかに、問題の「名義貸し」が潜んでいる。価格競争が激しくなるなか、『税務書類の作成』も差別化の一環で行われるようになったのだ。

(つづく)
【山下 康太】

 
(後)

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