ウエルシア社長、不倫報道で電撃辞任　ツルハとの統合キーマン失脚（前）

『週刊新潮』が不倫の証拠をつきつける

　「私生活において不適切な行為があり弊社の信用を傷つけるものであると判断した」
　4月17日、ドラッグストア首位のウエルシアホールディングス（以下、ウエルシアと略）は、松本忠久社長（65）が辞任すると発表した。この「不適切な行為」とは、松本氏の不倫である。『週刊新潮』が不倫の証拠をつかみ、松本氏やウエルシアに取材した結果、不倫を理由として会社側が辞任を勧告した。松本氏は親会社イオンの執行役も務めていたが、17日に解任した。当面は創業者の1人である池野隆光会長（80）が社長を兼務する。

　『週刊新潮』の情報サイト「デイリー新潮」（4月17日付）によると、不倫相手は親子ほど年の離れた30代の取引先企業に勤める中国人女性だという。松本氏がシンガポールに赴任していた7年ほど前から不倫の関係にあり、その後、女性は日本に移住。首都圏にある、健康食品の製造販売会社に勤務。この会社はウエルシアに商品を納めている。

　2人は現在も付き合いはじめの若いカップルのように「いちご狩り」ドライブや互いのケーキを「あーん」と食べあいっこする逢瀬がバッチリ写真に撮られている。また、お互いの家を行き来している。本社近くにある松本社長のマンションは、自宅が会社から遠方にある松本社長のため、ウエルシアが借り上げた”社宅”だそうだ。

ウエルシアは松本氏が勤めていた
ドラッグストアを買収

    松本氏は長野県佐久市出身で、実家は薬局を経営。高校卒業後、北陸大学薬学部に進学し、家業を継ぐため、薬剤師の資格を取得した。

　大学卒業後、修業を兼ねてドラッグストアチェーン「サンドラッグ」に入社。そんな松本氏に転機が訪れたのが社会人8年目。新興ドラッグストア「いいの」への転職だった。

　ウエルシアは1965年、明治薬科大卒の薬剤師・（故）鈴木孝之氏が埼玉県春日部市に「一の割薬局」を開業したのが始まり。2002年、池野隆光氏が率いる池野ドラッグと合併しウエルシアに改称した。ウエルシアは06年、松本氏が勤めている「いいの」を買収。以後、猛烈な勢いで同業者を吸収合併・買収してきた。

　松本氏は合併にともなってウエルシアに入る。上海やシンガポールなどの合弁会社でトップを務めた後、19年に持株会社ウエルシアHDの社長に就任、親会社イオンの執行役員も務めた。

創業者がイオンの岡田氏に託した「遺言」

　ウエルシアがイオンの子会社になった経緯に触れておこう。出雲神話さながらの「国譲り」の物語として人口に膾炙する有名な話だ。日本経済新聞は『ウエルシア創業者、イオンに託した「遺言」』と題する記事（14年4月14日付）を掲載した。引用する。

　〈（2014年）2月21日夕方。国立がん研究センター中央病院の病室にイオン社長の岡田元也（62）の姿があった。呼び出したのは同病院で闘病中のウエルシア創業者、鈴木孝之（76）だった。
　医師に余命数カ月と宣告されていた鈴木は看護師を退席させると岡田にこう語りかけた。「俺はもう後がない。ウエルシアを守ってやってくれないか」。岡田は「わかりました」と応じた〉

　〈（中略）2月21日の会談の数日後。「日本一のドラッグストアチェーン」構想に執念を燃やしてきた鈴木は抗がん剤治療を止めるよう医師に願い出て3月13日、息を引き取った〉

M&Aで業界初の売上高1兆円達成の立役者

　イオンはウエルシアを連結子会社化した。共同記者会見の席上、こんな発言があった。

　〈「イオンとの関係を深め有望市場で一気に頂点まで駆け上がりたい」。ウエルシアHD会長の池野隆光はこうぶち上げた。（中略）「鈴木氏の夢である日本一をぜひとも達成したい」と、イオンの岡田は語った〉（前出日本経済新聞）

　ウエルシアの経営トップは、「日本一」を達成することが使命であった。創業者・鈴木氏の意志を継いだ池野隆光会長は、19年に松本忠久氏をウエルシア社長に起用。猛烈な勢いで他社と合併しながら規模を拡大してきた。

　21年には調剤薬局を展開する愛媛県地盤のネオファルマーを買収するなど店舗網を広げ、22年にはドラッグストア業界で初めて売上高1兆円を達成した。

（つづく）

【森村　和男】