2024年07月05日( 金 )

空き家900万戸時代、福岡県の現状と対策とは(前)

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空き家のイメージ。ゴミ屋敷のようになり周辺の景観などに悪影響を及ぼすケースもある
空き家のイメージ。ゴミ屋敷のようになり
周辺の景観などに悪影響を及ぼすケースもある

 空き家の増加に歯止めがかからない。国の最新の発表によれば、日本では空き家数900万戸、空き家率13.8%(いずれも2023年10月1日現在)であるという。空き家は景観や防災、衛生、そして資産価値など、まちづくりに悪影響をおよぼすとされる。今後も増加必至の空き家について、福岡県ではどのような状況にあり、どのような対策が行われているのだろうか。

30年間で2倍

 総務省が4月30日に発表した「2023(令和5)年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)結果」によると、23年10月1日現在における日本の総住宅数は6,502万戸と、18年の前回調査と比べ4.2%(261万戸)の増加となった。総住宅数はこれまで一貫して増加が続いており、過去最多となっている。総住宅数のうち空き家は900万戸で、18年(849万戸)と比べて51万戸の増加となり、こちらも過去最多だ。そして、総住宅数に占める空き家の割合(空き家率)は13.8%と、前回調査(13.6%)から0.2ポイント上昇し、これも過去最高となっていた。空き家数の推移を見ると、これまで一貫して増加が続いており、1993年から23年までの30年間で約2倍となった。

 空き家数のうち、とくに社会的に悪影響をおよぼす恐れがあるのは、「賃貸・売却用および二次的住宅を除く空き家」(以下、「その他空き家」)だ。これは、賃貸用の空き家、売却用の空き家、二次的住宅(別荘など)以外の人が住んでいない住宅で、たとえば、転勤・入院などのため居住世帯が長期にわたって不在の住宅や、建替えなどのために取り壊すことになっている住宅などを指す。23年は385万戸(総住宅数に占める割合(「その他空き家」率)は5.9%)となり、18年(349万戸、5.6%)と比べて37万戸の増加、「その他空き家」率も0.3ポイント上昇した。

 空き家率を都道府県別に見ると、和歌山県と徳島県が21.2%と最も高く、次いで山梨県が20.5%となっている。また、「その他空き家」を都道府県別に見ると、鹿児島県が13.6%と最も高く、次いで高知県が12.9%、徳島県と愛媛県が12.2%などとなっており、西日本で高い傾向となっている。そこで、福岡県の状況についても確認しておこう。

福岡県は約33万戸

【表①】福岡県作成
【表①】福岡県作成

 福岡県の23年時点の総住宅戸数は270万2,000戸で、18年比12万1,000戸(4.7%)の増加だった。このうち空き家数は33万4,000戸で、18年比5,000戸の増加。空き家率は12.3%で、18年の12.7%から0.4ポイント低下した。「その他空き家」は12万5,000戸であり、18年の12万6,000戸から1,000戸が減少。「その他空き家」率も23年は4.6%で、18年の4.9%と比べ0.3ポイント低下している。【表①】

高良学・住宅計画課課長
高良学・住宅計画課課長

    23年時点の都道府県別住宅数では、福岡県は全国9位。空き家数は同8位で、空き家率12.3%は7番目に低かった(千葉県と同率)。「その他空き家」数は9位、同空き家率4.6%は6番目に低かった(宮城県、大阪府と同率)。「その他空き家」数が18年に比べて減少したのは全国で福岡県のみで、「その他空き家」率が同じく減少したのは、神奈川県、広島県、福岡県、熊本県、沖縄県の5県のみだった。

 福岡県で「その他空き家」数が全国で唯一低下したことについて、建築都市部住宅計画課の高良学課長は「その他空き家のうち『非木造の共同住宅』が8,700戸減少した影響。空き家数がこの30年で2倍に増加しているなど、空き家をめぐる大きな状況は全国の傾向と同じです」と、決して楽観できる状況ではないとの認識を示していた。加えて、「県では将来の空き家数の推計値を出していませんが、22年に見直しが行われた県の住生活基本計画のなかで、「その他空き家」を30年時点で15万戸程度に抑えることを打ち出しています」と話した。【表②】

【表②】福岡県作成
【表②】福岡県作成

(つづく)

【田中直輝】

(後)

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